2016 Fiscal Year Annual Research Report
ベンザインの高次利用に基づく医薬品開発志向型複素環骨格構築法の開発
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16J00868
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金子 英樹 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 反応開発 / ベンザイン / ベンゾジアゼピン |
Outline of Annual Research Achievements |
ベンゾジアゼピンは多くの生物活性物質を構成する主要な骨格であり、その短工程合成法の開発は、今なお重要な研究課題である。しかし、従来法の多くは合成可能な置換、縮環形式に限りがあり、7員環構築に数工程を要すものも多々ある。一方、以前ベンザインと単純で対称な環状ウレアとの反応により、ベンゾジアゼピン骨格を1工程で構築する手法が報告されたが、合成可能な置換、縮環形式は大幅に限定された。今回申請者は、非対称環状ウレアと非対称ベンザイン両成分のそれぞれ2ヶ所ずつ存在する反応位置を同時に制御し、生成しうる4つの位置異性体のうち、1つの多置換ベンゾジアゼピンを高選択的且つ1工程で合成する手法を開発した。本法は、同一のTfOベンザイン前駆体を原料とし、多様な非対称環状ウレアを反応させることで、2環性、3環性の様々なベンゾジアゼピンを作り分けることが出来るため、創薬化学において強力な合成ツールとなる。また、生成物上に残されたTfO基は、その後の金属触媒反応により容易に変換可能であるため、事実上全ての官能基を導入可能である。本法はベンザインの中でも特にTfOベンザインとのみ特異的に進行するため、この活性種の新たな可能性を示唆することができた。さらに、本手法のようにベンザインの反応位置と、その反応対象化合物の反応位置両方を制御した世界初の例であるため、ベンザイン化学の新しい研究領域を構築することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この1年間で以下の成果を得た。 1、本法によって同一のTfOベンザイン前駆体を原料とし、多様な非対称環状ウレアを反応させることで、2環性、3環性の様々なベンゾジアゼピンを作り分けることが出来た。 2、生成物上に残されたTfO基は、その後の金属触媒反応により容易に変換可能であったため、事実上どんな官能基でも導入可能である。 3、本手法はフッ素アニオンを作用させるという、極めて穏和な反応条件で進行するため、アセチル基、アセタールのような官能基を有する環状ウレアも適用可能であった。 4、同一のウレアを原料とし、反応させるベンザインを変えることで、芳香環上の相補的な位置に酸素原子を有する2種のベンゾジアゼピンを作り分けることにも成功した。 申請者は米国テキサス大学Larionov研究室へ3ヶ月間留学をし、ベンザイン反応に関する共同研究を行なった。本研究は既に一度の国内学会で発表している。そして現在論文投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに多様な環状ウレアを適用させることで、本法の拡大を目指したい。今のところ、硫黄原子と窒素原子を有する環状ウレアを適用させることでベンゾチアゼピンを合成することを計画している。また、今回は5員環ウレアのみを適用したが、4員環、6員環ウレアも適用することを計画している。さらに、ベンザインだけでなくアザベンザインも適用させることでピリドジアゼピンの合成も行う。
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