2016 Fiscal Year Annual Research Report
膜タンパク質機能を標的とした新規ペプチド創薬in vitroスクリーニング系構築
Project/Area Number |
16J00901
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡村 昂典 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | スクリーニング / 膜タンパク質 / 無細胞翻訳系 / リポソーム / ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、リポソームディスプレイ法という無細胞翻訳系を用いたリポソーム内膜タンパク質合成技術とセルソーターを組み合わせた手法を応用し、ヒト由来カルシウムトランスポーターLetm1の機能阻害ペプチドのスクリーニング系確立を目指した。 研究目標を達成するために、研究代表者は3つのマイルストーンを設定した。1) 本実験系によってLetm1の輸送活性阻害剤(低分子成分)の検出が可能であると実証すること、2) Letm1の阻害作用を持つペプチドをコードするDNA配列を含むDNAライブラリーを作製すること、3) ペプチド阻害剤のスクリーニング条件の検討を行うことである。 本年度はLetm1輸送活性の阻害作用検出系の確立に着手した。具体的には、Letm1を内部合成したリポソーム外部に輸送基質のカルシウムイオンと既知の阻害剤を添加し、カルシウムイオンのリポソーム内部への取込みが阻害されるかをフローサイトメーター(セルアナライザー)で観測した。Letm1はプロトンとの対向輸送でカルシウムイオンを取り込むため、阻害剤には脂質膜を挟んだプロトン勾配を消失させるイオノフォアという分子群に属するナイジェリシンおよびカルボニルシアニド-m-クロロフェニルヒドラゾン(CCCP)を選択し、阻害作用を検出できるかを観測した。その結果、2種のイオノフォアでは、Letm1によるカルシウムイオンの取り込みを阻害することは出来なかった。 次に、プロトン勾配を消失させるアプローチで阻害作用を検出可能であるという仮説が成立するかを確かめるために、リポソーム外部のpH条件を変化させることでLetm1の輸送活性に影響をあたえることが出来るかを確かめた。その結果、リポソーム外液のpH値を調製し脂質膜内外のプロトン勾配を低下させることでLetm1の活性を低下させることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、既知の阻害剤による輸送活性阻害を検出することはできなかったが、脂質膜を挟んだ溶媒のpHの差にLetm1のカルシウム輸送活性が依存することを確かめることができた。これはプロトン勾配を消失させる分子によって阻害作用を観測することができるという仮説自体は正しいことを示唆しており、他のイオノフォアによって阻害作用を観察できる可能性があると考えている。従って、研究はおおむね予定通り進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度検討したナイジェリシン、CCCP以外のイオノフォアを用いて阻害作用検出系の確立を目指す。また、イオノフォアの検討でうまく検出系が機能しない場合は、リポソームの脂質組成やカルシウムイオンの取り込みを検出する蛍光リガンドを検討し、検出感度の向上を目指す。
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