2016 Fiscal Year Annual Research Report
次世代電子デバイスの理論設計に向けた第一原理電伝導計算手法の開発
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16J00911
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
岩瀬 滋 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / パワーデバイス / 数理アルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の前半では、SiO2 /SiC界面の電子輸送特性に関する研究を中心に研究し、その成果を論文として発表した。この研究では、これまで原子レベルで研究されることのなかったSiO2 /SiCのチャネル伝導の劣化機構を調べるために、大規模な第一原理伝導計算を行い、実験で観測されている伝導帯側の顕著な移動度劣化が本計算においても確認できることを示した。さらに計算結果について詳しく検討を行うことで、その原因が松下らによって明らかにされたSiCの特異な電子状態(floating state)に起因することを突きとめた。今年度の後半では、筑波大学の櫻井鉄也教授らのグループと共同で高効率な第一原理伝導計算手法の開発を行い、その成果を論文として纏め投稿した。この研究では、基礎・応用の両面で重要度が高い高精度第一原理伝導シミュレータの実現に向けて課題となっている電極の自己エネルギー項の計算方法に関する新たな手法の提案を行った。提案方法はSakurai-Sugiura法と一般化ブロッホ条件を併用することで、高効率かつ並列の極めて高い数値計算手法である。提案方法の有用性を検証するために、最も良く知られている方法と比較を行い、計算速度・メモリ使用量において100倍以上効率が高いことを確認した。さらに、スーパーコンピュータOakforest-PACS上で2048ノードを使用した場合でも高いスケーラビリティを発揮することを確かめた。本手法は第一原理伝導計算のみならず、複素バンドの計算などにも応用可能であり、広く材料開発のためのシミュレーション技術基盤に資する成果であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、実空間差分法に基づく高精度な第一原理伝導シミュレーション手法の開発とそれを用いた次世代デバイスの理論設計を研究目的としている。これまでに高効率な自己エネルギー計算方法の開発やSiC界面のチャネル移動度劣化機構の解明など着実に研究成果を上げている。今年度の研究計画にあった波動関数法と非平衡グリーン関数法を組み合わせた有限バイアス第一原理シミュレーションについても現在コード開発を行っており、おおむね順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
計画書の通り、多体電子相関を高精度に扱う方法であるトランスコリレイテッド法を実空間法に適した微分形式に定式化を行い、研究室で開発している電子状態計算コードに実装する。開発したコードの精度確認を兼ねて、既存の平面波展開ベースのトランスコリレイテッド法で計算された物性値と比較検証する。具体的には、Si、β-SiC、ダイヤモンドの格子定数、バンド構造、バンドギャップ値、体積弾性率を比較して精度を評価する。さらに、トランスコリレイテッド法を伝導計算コードに組み込み、金属電極間の原子鎖や分子架橋系の電子輸送特性の解析を行い、実験と比較検証する。
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Research Products
(5 results)