2016 Fiscal Year Annual Research Report
X線形状計測法を用いた高精度X線ミラー作製法の確立と新規X線顕微鏡の開発
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16J00953
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 純平 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | X線光学素子 / Xミラー / X線顕微鏡 / 超精密加工 / イオンビーム加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
4枚の全反射ミラーから成るAdvanced Kirkpatrick-Baez (AKB) ミラー光学系を用いた結像型硬X線顕微鏡は,色収差無く高分解能な顕微観察が可能であるという優れた特徴を持つ.しかし従来のAKBミラー光学系では,有効な倍率を稼ぐために数十mの全長を必要とするため,汎用性に欠けるという問題点があった.検出器の実効ピクセルサイズの制限という観点から,光学系により実現できる拡大倍率も高分解能イメージングの実現のためには重要な要素となる.本研究では,双曲凸ミラーと楕円凹ミラーを組み合わせ,光学系の主面を物点側へ移動させることにより,短い全長においても大倍率を実現できる新たなX線結像ミラー光学系の開発を進めた. 新規光学系の実証のため,独自に開発したイオンビーム加工装置によりX線結像ミラーを作製し,SPring-8 BL29XULにて縮小結像実験を行った.本光学系はスリット(物点)から結像面までの距離2.1 mにおいて,321倍という高い縮小倍率を実現できる.開口幅10μmのスリットの縮小像をワイヤスキャン法により評価したところ,ほとんど回折限界である半値幅61 nmの縮小像を取得できた.これは,従来のAKBミラー光学配置では幾何倍率の制限により達成し得ない値であり,本光学系の有効性を示すものである.またグレーチング干渉計により,本結像ミラー反射後の波面誤差を複数の入射角において計測したところ,それらの誤差は概ねλ/4以下となった.これにより,本光学系は広い視野を有していることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初1~2年目の計画であった,計算機実験による詳細な光学特性の解明と,X線ミラー作製および実証実験を一部同時進行的に進めることに成功した.どちらの研究項目に対しても優れた結果を得ることができ,学術論文や国内外学会での発表にまでこぎつけている.また,光学系の性能をより向上させる新たなアイデアとして,X線の多層膜反射を用いた結像システムを提案した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,光学系の更なる改良として接着・接合による光学素子の一体化を進め,安定性の向上を見込んだ上で,新規X線顕微鏡の構築を目指す.多層膜反射による結像システムの理論検討と実証を行い,準備が整い次第,新規X線顕微鏡への実装を試みる.また,当初の計画通り回折格子干渉計を応用した高分解能X線位相イメージングの準備を進める.
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Research Products
(8 results)