2016 Fiscal Year Annual Research Report
スポーツ集団を通したスポーツ競技者のレジリエンスの獲得・形成プロセスの解明
Project/Area Number |
16J00972
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上野 雄己 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | レジリエンス / パーソナリティ特性 / 大規模横断調査 / マルチレベルアプローチ / スポーツ競技者 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本国内では介入研究はもとより,レジリエンスの獲得を目的とした基礎的な研究はほとんど行われていないのが実情である。そこで,平成28年度ではレジリエンスの促進要因を多角的に検討するために,1)スポーツの競技特性要因とパーソナリティ特性との関連,2)レジリエンスと身体活動量,パーソナリティ特性との関連,3)集団と個人レベルのレジリエンスとの関連,について研究を進めた。これらの概要および知見を以下のようにまとめた。 1.スポーツの競技特性要因(競技種目,競技レベル)とパーソナリティ特性(Big Five,Dark Triad,二分法的思考など)との関連を検討することを目的とし,対象は大学に所属するスポーツ競技者であった。結果として,競技特性要因とパーソナリティ特性との間に関連があることが示唆され,競技者のレジリエンスの獲得を検討するうえで,パーソナリティ特性の変数を導入する必要性が考えられた。 2.大規模横断調査によるレジリエンスの促進要因を探索的に検討することを目的とし,対象は47都道府県の20歳から69歳の日本人成人であった。結果として,日本国内で検討されてこなかった大規模横断調査によって,レジリエンスは概ね年齢とともに向上することが示され,そこには身体活動量やパーソナリティ特性(Big Five,Dark Triad,二分法的思考など)が促進要因になることが確認された。 3.集団活動を通した個人のレジリエンスの変化において,集団が持つ特性(等質性・異質性)の影響を検討することを目的とし,対象は大学に所属している学生であった。結果として,集団が持つ等質性,異質性がもたらす個人のレジリエンスへの異なる影響が示されたとともに,集団と個人の階層性が確認され,今後は集団活動を通したレジリエンスの向上に対する実践や介入のプログラムの有用性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度では,競技者のレジリエンスの獲得プロセスを解明するうえで,1)スポーツ独自のフィールドにおけるパーソナリティ特性の役割,2)日本国内の大規模データによるレジリエンスの知見の一般化,3)集団と個人の階層性の検討,と当初の計画以上に多角的な視点から研究を進めることができた。一方で,スポーツ集団を対象とした,チームと競技者個人の関係性を明らかにすることができなかったことが挙げられる。なお,平成28年度で得られた知見は学術論文として5報(内,査読付き4報)受理され,また国内の学会にて3報のポスター発表,2報のシンポジウム(内,国際学会1報)を行い,国内外の学会にて発信することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では,日本国内においてレジリエンスの促進要因の検討が少ないことから,スポーツ領域だけでなく,様々なフィールドを対象としたうえで,レジリエンスを向上させるための促進要因を多角的に明らかにすること目的とした。一方で,当初の計画以上に多くの知見が得られたが,介入プログラムを開発するうえでエヴィデンスが不足しているのが実情である。具体的には,1)本年度で検討することができなかったレジリエンスを促進させる可能性のあるパーソナリティ特性との関連,2)日本人を対象とした大規模データからスポーツとレジリエンスとの関係性を明らかにすること,3)集団特性に応じたパフォーマンスとメンタルヘルスに及ぼす影響の検討,といった3つの視点である。次年度は,その3つの視点にもとづき,研究を進め,新たな知見の収集に努める。
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