2016 Fiscal Year Annual Research Report
翻訳伸長段階におけるリボソームストークタンパク質複合体の分子動態解析
Project/Area Number |
16J01001
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
今井 大達 新潟大学, 大学院自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | リボソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
XFELを利用したリボソームの1分子イメージングを行うため、以下のように測定試料の調製を行った。大腸菌Q13株より70Sリボソームを精製後、エタノール処理によってストークタンパク質L12を特異的に除去した。複数種類のL12変異体(A63C、E112C、K120C)を大腸菌発現系にて調製し、biotin標識後、L12欠損70Sリボソームと混合し再構成を行った。再構成後の70Sリボソームをショ糖密度勾配遠心により分画採取することで遊離のL12変異体を除き、回折実験に使用した。回折実験は国内のXFEL施設SACLAにて行った。各種L12変異体を再構成した70Sリボソームに、大きさ20nmの金ナノ粒子(Streptavidin-Gold)を添加後、XFELを照射し回折データを得た。その結果、L12-A63Cを再構成した70Sリボソームにおいて金ナノ粒子が複数個結合した回折像を得ることに成功した。しかしながら複数の金ナノ粒子が結合したリボソームから得られる回折像の割合は低く、再構成像を計算するまでには至っていない。現在は標識手法、L12への変異導入部位、金ナノ粒子の大きさの3点について検討を行い、L12への金ナノ粒子の標識効率の向上を試みている。 翻訳伸長のみならず、翻訳終了後のリボソームのリサイクルもまたタンパク質合成において重要な過程の1つである。今回、超好熱性古細菌Pyrococcus furiosus由来の試料を用いたin vitroの解析により、ストークタンパク質P1がリボソームリサイクル因子ABCE1と直接結合し、リボソーム依存的なATP加水分解活性を促進することを新たに見出した。この結果は、翻訳機構におけるストークタンパク質の新たな機能を示す重要な知見であり、国際学会を含む複数の研究会で報告した。現在この機構に関して得られた研究成果を国際論文として投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、1年目の年次計画に記載した通り、XFELを用いたリボソームの1分子イメージング実験を行った。回折実験は国内のXFEL施設SACLAにて行った。各種L12変異体を再構成した70Sリボソームに、大きさ 20 nmの金ナノ粒子(Streptavidin-Gold)を添加後、XFELを照射し回折データを得た。その結果、L12-A63Cを再構成した70Sリボソームでのみ金ナノ粒子が複数個結合した回折像を得ることに成功した。しかしながら、複数の金ナノ粒子が結合したリボソームから得られた回折像は得られた全ての回折像のうち0.4%と低い頻度であった。現在は金ナノ粒子の標識効率を向上させるため、標識手法、L12への変異導入部位、金ナノ粒子の大きさの3点について検討を行っている。また年次計画には記載されていないが、平成28年度の研究により、ストークタンパク質がリボソームのリサイクル反応を担うATPase、ABCE1と直接結合し機能発現を促進することが新たに明らかとなった。ストークタンパク質は翻訳GTPase因子の機能発現のみを促進することが研究者の間で常識となっていたが、この認識を大きく変える発見であると考えている。 これらの結果より、本研究課題の進捗状況は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では引き続き、①リボソームストークタンパク質の1分子イメージングと、②リボソームリサイクル反応におけるストークタンパク質の機能解析の2点について重点的に研究を行う。 ①XFELを利用したリボソームの1分子イメージングは、以下の点を検討することによって金ナノ粒子の標識効率の向上を目指す。(1)標識部位と標識方法の検討。これまでストレプトアビジン-ビオチン系を利用しL12のA63、E112、K120部位に金ナノ粒子の標識を行ってきた。平成29年度では、L12のC末端側にHis-tagを導入したL12-Hisを調製し、リボソームに再構成後、His-NTA系を利用して金ナノ粒子(gold-NTA)をL12に標識する。(2)金ナノ粒子を20nmの大きさのものから15、10、5nmのものに変更する。 ②リボソームリサイクル反応におけるストークタンパク質の機能解析では、ストークタンパク質P1とリボソームリサイクル因子ABCE1の相互作用様式を解明する。P1とABCE1の複合体のX線結晶構造解析を行い、それらの相互作用様式を原子分解能レベルで明らかにすることを試みる。
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