2016 Fiscal Year Annual Research Report
我が国の拠点空港/港湾における国際競争力向上に向けた研究-理論・実証・政策-
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16J01007
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
堂前 光司 神戸大学, 大学院海事科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 高度海事生産者サービス(AMPS)企業 / 高度生産者サービス(APS)企業 / 管理機能集積 / 世界海事都市 / 港湾都市 / 集積の経済 / 国際都市研究 / 東アジア地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に、以下の2点について明らかにした(国際海運と国際航空の大きくは2つに取り組んでいるが、以下では、国際海運を中心に取り上げる)。
1. アジア地域における海運企業とターミナル・オペレーターの管理機能集積とその形成要因 国際的に事業を展開している主要な海運企業やターミナル・オペレーターの管理機能が集積した都市を海事都市と定義した上で、アジア地域における海事都市形成の要因を検証した。すなわち、国際コンテナ貨物取扱量、高度海事生産者サービス(AMPS)企業数、および高度生産者サービス(APS)企業の集積に基づいた都市ランク変数を取り上げて、主要な海運企業とターミナル・オペレーターの管理機能立地との間で相関分析を行った。その結果、国際コンテナ貨物取扱量は、海運企業やターミナル・オペレーターの管理機能立地に対して、決定的に大きな要因ではなく、むしろ、これら海運企業やターミナル・オペレーターの管理業務をサポートする高次ビジネス・サービス企業、すなわち、AMPS企業の集積との間に、極めて強い相関関係が確認された。 2. アジア地域における高度海事生産者サービス(AMPS)企業の集積とその立地要因 フリードマンの世界都市仮説やサッセンのAPS理論を踏まえて、アジア地域におけるAMPS企業の立地要因について、多角的に検証を行った。分析結果からは、AMPS企業の立地に対して、地域特化変数と都市化変数の影響の方が、港湾特有変数の影響よりも、極めて大きいことが明らかとなった。国際コンテナ貨物取扱量の観点からは、アジア地域における我が国の港湾の相対的プレゼンスは低下しているものの、AMPS企業の集積の観点からは、例えば、東京は上位に位置付けられていた。以上のことから、本研究は、グローバルなAMPS企業が集積した海事都市と、国際コンテナ貨物の集配地の相違を明らかにしたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本的には、当初の研究計画に従って研究に取り組んでいるが、データの入手可能性等の理由から、必要に応じて、計画の調整や変更を行っている。 研究成果については、国内外の学術雑誌や国際学会において、順調に研究成果の発表を行っており、特に、学会賞等も受賞していることから、その学術水準レベルは高いと評価される。 以上のことから、本研究の現在までの達成度は、「おおむね順調に進展している」と判断した。 【受賞履歴】 日本交通学会 学会賞(論文の部)、日本交通学会、2016年10月8日。 関西交通経済研究センター 懸賞「提案・提言」論文 優秀賞、公益財団法人 関西交通経済研究センター、2017年3月1日。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、主に、以下の5点について取り組む予定である。ここで、データの入手可能性等の理由から、当初の研究計画を変更する予定であるが、研究目的を達成する上で、大きな支障にはならないと考える。 1. 我が国における海事製造業の空間的集中と地域特化の検証:全国75工業地区を分析対象として、ハーシュマン・ハーフィンダール・インデックス(HHI)により、海事製造業の地理的集中/分散の程度を測定すると同時に、特化係数(LQ)により、海事製造業の地域特化の程度を計測する。 2. 我が国の海事製造業における集積の経済の検証:全国47都道府県を分析対象として、HHIとLQにより、我が国の海事製造業の地理的集中/分散の程度を計測する。そして、生産関数を推定した上で、これらの集積を、マーシャル・アロー・ローマー(MAR)型、ジェイコブス型、およびポーター型の3タイプに分類する。 3. 我が国の海事製造業における集積の経済と地域成長の関係の検証:Glaeser et al.(1992)およびHenderson et al.(1995)等の先行研究を踏まえて、我が国における工業地区、あるいは都道府県を分析対象として取り上げた上で、海事関連産業における集積の経済と地域成長の関係を検証する。 4. 我が国の海事製造業における集積の経済の検証:我が国における工業地区、あるいは都道府県を分析対象として取り上げた上で、計量経済モデルを構築し、海事部門における集積の経済(都市化の経済と地域特化の経済)の存在、およびその大きさを検証する。 5. 神戸市の海事部門における集積の経済の検証:我が国において、最大の海事産業クラスターが存在する神戸市を分析対象として取り上げた上で、海事部門における集積の経済と都市成長の関係を検証する。そして、神戸港の国際競争力を向上させる方策について検討する。
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Research Products
(14 results)