2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J01067
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松井 紘樹 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | テンソル三角圏 / テンソルイデアル / Balmerスペクトラム / Grothendieck群 / 分解部分圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究者は本年度において主に部分圏の分類について研究を行った。可換環上の加群圏や導来圏などの圏の構造を知ることは可換環の表現論において重要な問題である。この問題へのアプローチとして、一つには対象の分類がある。これは直和と直和因子で閉じた部分圏を分類することと同値である。しかし、このアプローチは一般には絶望的であることが知られている(Drozdのtame-wild分離定理)。そこで、直和と直和因子の他にも操作を許した部分圏を分類することが考えられている。
本年度は主に以下の成果を得た。 (1)可換ネーター環上の右有界導来圏の有界複体で生成されたテンソルイデアルを環のスペクトラムの特殊化閉集合を用いて分類した。この結果はHopkins-Neemanにより知られていた完全複体のなす導来圏のthick部分圏の分類の拡張となっている。特に、与えられた二つの有界複体に対して、一方が他方から直和、直和因子、懸垂、写像錐、テンソル積を用いて得られるための必要十分条件が得られる。さらに、右有界導来圏のテンソル三角圏構造から定まるBalmerスペクトラムという位相空間の構造解析を行い、Balmer氏による予想に反例を与えることに成功した。本研究は高橋亮氏との共同研究である。 (2)完全圏の稠密分解部分圏で生成系を含むものをGrothendieck群の部分群を用いて分類した。この結果はThomasonによる三角圏の稠密三角部分圏の分類に対応する結果となっている。さらに、この結果を環上の加群圏に応用することで、体上の有限次代数や可換ネーター環において稠密分解部分圏で全ての射影加群を含むものが有限個であるための必要十分条件を与えた。特に、2次元完備正規なGorenstein環においては、そのような稠密分解部分圏が有限個であることと環が単純特異点となることが同値であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要における(1)の成果は、与えられた二つの複体に対して一方が他方からいくつかの操作により得られるための条件を与えるという申請者の研究目標を一部達成するものである。 また、(2)の成果は稠密分解部分圏を分類するものであるが、全ての分解部分圏は元の完全圏の直和因子で閉じた分解部分圏の稠密分解部分圏となるので、この結果により分解部分圏を分類するためには直和因子で閉じたものさえ知ることができればよい事が分かる。一方で、あるGorenstein環のクラスにおいては、直和因子で閉じた分解部分圏は分類されているので、この結果は分解部分圏の分類を完成させる重要な足掛かりとなるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も部分圏の分類について研究を進めていく。本年度では右有界導来圏のBalmerスペクトルの構造解析を行ったが、その構造についてはまだ分かっていないことが多々ある(ネーター性など)。そこで、Balmerスペクトルの構造解析を進めるとともに、得られた右有界導来圏における結果の、本来知りたかった有界導来圏の部分圏の分類への活用を目指す。
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Research Products
(9 results)