2017 Fiscal Year Annual Research Report
癌抑制タンパク質p53誘導性PPM1Dホスファターゼによる精子形成機構の解明
Project/Area Number |
16J01123
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小笠原 紗里 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ホスファターゼ / 脱リン酸化酵素 / スプライスバリアント / 精子形成 / 細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
PPM1Dホスファターゼは精子形成への関与が示唆されている。本研究の目的は、精子形成過程におけるPPM1Dスプライスバリアントの機能を解明することである。 ヒト精巣由来胚性癌細胞NT2の細胞分化過程におけるPPM1D機能解明を実施した。これまでに、PPM1D特異的阻害剤SL-176やPPM1Dノックダウンにより、PPM1Dがレチノイン酸分化誘導を抑制する可能性を示している。そこでPPM1D過剰発現がレチノイン酸分化誘導効率に与える効果を解析した。レチノイン酸非存在下では、野生型PPM1D発現細胞では分化マーカーOct-4の発現分布はほとんど変化しなかった。一方、PPM1Dの不活性型変異体を発現させた細胞ではOct-4の発現分布が著しく低下していた。レチノイン酸存在下では、野生型PPM1D発現細胞のOct-4分布はわずかにコントロールより高くなっていた。したがって、PPM1Dがレチノイン酸分化誘導を負に制御する可能性が支持された。 次に、PPM1DはERK由来の配列を持つリン酸化ペプチドに対して高い脱リン酸化能を持つことが示された。NT2細胞のレチノイン酸分化誘導において、短時間で一過的にERKリン酸化が増加することを見出し、そのリン酸化がPPM1D阻害剤SL-176投与により亢進することを明らかにした。また、レチノイン酸はMEK-ERKにより下流のシグナルを誘導していることが示唆された。 並行して、CRISPR-Cas9によりPPM1Dノックアウトおよびスプライスバリアントを選択的にノックインしたNT2細胞株の作製を実施した。現在までに、ヒト肺癌由来H1299細胞において全長PPM1Dが発現していないことをタンパク質レベルで確認し、エキソン1が欠損しており遺伝子が組み変わっていることをPCRにより確認した。また、ノックインプラスミドのデザインおよび作製を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PPM1D阻害剤SL-176や各種阻害剤を使用し、PPM1Dの脱リン酸化候補タンパク質の細胞内でのリン酸化変化を解析した。その結果、PPM1Dの脱リン酸化を介してレチノイン酸分化誘導を調節している経路の存在を示すことができた。また、CRISPR-Cas9によるPPM1Dノックアウト細胞株の樹立はできていないが、プラスミドのデザインの最適化ができた。 以上のように、全体として順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
分化誘導経路ではなく、PPM1Dが未分化状態を維持する機構の検討を行う。また、引き続き、PPM1Dノックアウト細胞株の樹立を目指し、スプライスバリアント選択的にノックイン可能な細胞株の作製を実施し、スプライスバリアントの機能を明らかにする。 p63タンパク質は生殖細胞において分化制御に関与する可能性が示されている。また、p63の活性調節ドメインには、PPM1D430のC末端領域と極めて高い相同性を持つ領域がある。さらには、p63は複数のPPM1D基質モチーフを有している。そのため、細胞分化過程におけるPPM1Dとp63の機能について解析を実施する。PPM1Dノックダウンや過剰発現がp63の発現量や機能、細胞増殖に及ぼす効果を解析する。
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Research Products
(1 results)