2016 Fiscal Year Annual Research Report
エンタングルメントを用いた非フェルミ液体の特徴づけ
Project/Area Number |
16J01135
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 裕也 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | エンタングルメント / 非フェルミ液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、非フェルミ液体という強相関量子多体系に対してエンタングルメントを用いてその性質の解明を試みるものである。本年度はその一環として「 ギャップレス系におけるエンタングルメントスペクトルの分布関数とエンタングルメント比熱の関係」という題目の研究を実施した。 この研究では、エンタングルメント比熱(エンタングルメントスペクトルを用いて定義される仮想的な系の比熱)という量が実際の物理系の比熱と対応するという予想の下に、エンタングルメント比熱の温度依存性を検出する方法としてエンタングルメントスペクトルの分布関数を用いることを提案した。具体的には、エンタングルメント比熱の温度依存性に対応したエンタングルメントスペクトルの分布関数を解析的に導出し、実際にその分布関数を用いることでエンタングルメント比熱の温度依存性が検出できることを示した。さらにこの結果を非フェルミ液体と考えられているν=1/2 量子ホール系に適用することで、この系のエンタングルメント比熱が非フェルミ液体的な非自明な温度依存性を持つことを示唆する結果を得た。 この結果は、(1) エンタングルメント比熱という量に着目することで非フェルミ液体の特徴を検出できる可能性を示した (2)そのエンタングルメント比熱の効率的な数値的検出法を提案した、という点で重要であり、「エンタングルメントを用いた非フェルミ液体の特徴づけ」へ向けた第一歩となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はエンタングルメント比熱という量を提案し、それを実際に非フェルミ液体とされる系に適用して一定の成果をあげることができた。これは本研究課題の目指す「エンタングルメントを用いた非フェルミ液体の特徴づけ」への着実なステップと呼べるものであり、研究課題の進捗はおおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
実績欄で述べたように、本年度の研究ではエンタングルメント比熱と実際の比熱との対応関係を仮定した上でエンタングルメント比熱の温度依存性を調べた。今後はこの研究の前提部分を補強するべく、実際の比熱とエンタングルメント比熱との関係を具体的な模型を用いて研究していくことを考えている。非フェルミ液体は本質的に強相関系であり解析的な計算は難しいと考えられるため、テンソルネットワーク法などを用いた大規模な数値計算の実行を検討中である。
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