2016 Fiscal Year Annual Research Report
シガテラ中毒の解毒剤開発を志向したマイトトキシン作用標的分子の同定
Project/Area Number |
16J01199
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
尾上 久晃 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
Keywords | マイトトキシン / 構造活性相関研究 / Ca2+流入活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書において目的としていたマイトトキシン(MTX)の両親媒性部分構造LMNOPQRSTU環部の合成に先立ち、その親水性フラグメントであるLMNO環部の合成ルートのブラッシュアップと再合成を行い、活性評価を行った。その結果、ID50値を算出するには至らず、300μMの濃度でMTXのCa2+流入活性を36%阻害するという弱い活性を示すに留まった。所属研究室ではその非天然型エナンチオマー(ent-LMNO環部)を合成しており、同程度の阻害活性(300μMで19%阻害)を示すことも分かった。これらの結果から、活性発現には絶対立体配置はさほど重要ではない可能性が示唆された。一方、既に合成を達成していた疎水-親水性境界領域であるNOPQRS環部アナログも併せて活性評価を行ったところ、300μMでは全く活性を示さないという興味深い知見が得られた。 LMNO環部、NOPQRS環部アナログとも強い活性は示さなかったが、「天然型/非天然型部分構造の活性の比較による立体化学の重要性の評価」ならびに「疎水-親水性境界領域部分の合成と活性評価」はどちらも世界初の報告であり、今後MTXの作用機序を解明していく上で重要な知見となり得ると期待しており、近日中に論文投稿する予定である。 親水部、両親媒性部とも期待した活性が得られなかったため、当初の予定を変更し、疎水部に含まれるWXYZA'B'C'D'E'F'環部の合成を進めることとした。これまでの結果から疎水部が活性発現により重要な可能性が高いことが示唆されており、当該部分構造はMTXの3分の1に相当する分子サイズを有することから、強力な阻害剤となると期待している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
合成した部分構造の活性は期待通りではなかったが、これまでに報告例の無い成果を2つ挙げられた点では評価できると考えている。現在、論文投稿準備中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画を変更し、より強力な活性を持つことが期待される疎水性部分に再度注目して研究を行う。十分な活性を持つものが得られたならば、当初の予定通り分子プローブへと誘導し、マイトトキシンの作用標的分子の同定を試みる。
|