2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J01302
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川俣 良太 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 高赤方偏移銀河 / 重力レンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
形成初期であることや宇宙再電離に中心的に寄与したと考えられていることから,赤方偏移 z~6-9 (宇宙年齢 5-10 億歳の頃) の銀河の性質を解明することが重要である.この時代の特に暗い側の銀河は明るさのみが測定され,より難しい銀河のサイズの測定はあまり進んでいなかった.銀河のサイズは,明るさと合わせることで銀河内部の星形成の物理について情報をもたらしてくれる点を含めて重要である.暗い銀河を観測するために,本研究では銀河団による重力レンズ効果を活用する. 本年度は,レンズ効果を引き起こす銀河団の質量分布の推定と,レンズ効果を補正した銀河のサイズの測定を計画通り行なった.その結果,暗い銀河のサイズのこの時代において世界最大のサンプルを構築することに成功した.また,サンプルが大きくなったおかげで,より大きな銀河は観測できないという観測の不完全性が,想定以上に強力に影響していたことがわかった.先行研究では,得られていた小さなサンプルから,暗い側になると急激に銀河のサイズが小さくなるという傾向が示唆されていた.しかし,本研究ではそれが観測バイアスであることを明らかにした.現在,この観測の不完全性を補正するために新たな統計解析手法を導入し,銀河の明るさとサイズの真の関係を求める研究を進めている途中である.真の関係の導出は,宇宙再電離の議論に重要な銀河紫外光度関数の見積もりや,理論側への正確な観測データの提供という面において重要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
銀河団の質量分布モデルの推定と,そのモデルを利用した z~6-9 の銀河のサイズ測定は,計画通り完了した.Hubble Frontier Fields の1つ目の銀河団のデータのみを使用した我々の先行研究に比べ,6つの銀河団のデータを用いた本研究では,サイズ測定を行った銀河の数は z~6-7 で約11倍,z~8 で約8倍になり,新たにz~9 の銀河のサイズも測定した. 実施計画では,得られたサンプルを用いて「サイズ-明るさ関係の定式化」を進める予定であった.しかしながら,想定していない新たな発見があったために,より慎重に解析と議論をする必要があることがわかり,未だ完了していない.具体的には,より大きな銀河は観測できないというサンプルの不完全性が,想定以上に強力に影響していたことがわかった.そもそもこの不完全性は先行研究では考慮されておらず,今回銀河数を増やして初めて議論できるようになったものである.この不完全性のために,観測された銀河から得られる見かけのサイズと明るさの関係は,真の関係よりも急になってしまう.真のサイズと明るさの関係を求め,光度関数や,銀河に働く物理過程に制限を与えるためには,この不完全性を補正する必要がある.現在は,この目標に向かい新たな統計解析法を導入し,その初期成果を3月の国内学会で発表した段階である.
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Strategy for Future Research Activity |
最終段階にある「サイズ-明るさ関係の定式化」の解析を早期に完了させ,学術論文として発表することを目指す.この論文の焦点は,関係の定式化と観測バイアスを考慮すべきとの注意喚起である.その後,すでに得られている世界最大の銀河のサイズのサンプルを利用して,銀河の性質のより詳細な議論を行う.具体的には,より長波長側の撮像データを用いた星質量の見積もりや,個々の特異な天体の議論,理論側の研究者と共同でシミュレーションとの比較などを行いたい.
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