2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J01494
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小杉 卓裕 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 粘性解 / 完全非線形方程式 / 準線形方程式 / p-ラプラス作用素 / 最大値原理 / 弱ハルナック不等式 / 自由境界問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
一階微分に関して劣線形増大度をもつ二階の完全非線形偏微分方程式に対する強解の存在を示し,それを利用して,Lp-粘性解のABP最大値原理及び弱ハルナック不等式を得た.弱ハルナック不等式を示す際は,通常強最大値原理を用いるが,劣線形増大度をもつ方程式に対しては最大値原理が一般には成り立たないことを示し,強最大値原理の代わりとなる評価を得た.また,これを主要部に特異性をもつp-ラプラス作用素のような,一階微分が零となる点で特異性をもつ完全非線形方程式に対して応用することで,そのような方程式に対する粘性解のヘルダー評価を得た.この結果は一階微分の非有界係数を扱った初のケースである. 様々な自由境界問題の処罰法による近似方程式の近似解がもとの解に収束する収束率を導いた.その証明の際にEvansにより開発された非線形方程式に対する随伴法を用いている.問題ごとに必要となる評価が異なり,それぞれ工夫が必要になった.特に,勾配拘束問題の近似解に関する評価は,わざわざ障害物を挟み込んだものに対して行うことによってうまくいった. 両側障害物問題と勾配拘束問題に現れる二種類のベルマン-アイザックス型方程式の粘性解の同値性を示した.両側障害物問題のリプシッツ定数を明示的に表示することで,同値性が成り立つための十分条件を与えた.本研究では主要項が退化性や特異性をもつ場合も扱っており,変分不等式における先行研究の適用範囲を超えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特異性をもつp-ラプラス作用素を含むような一般的な形での完全非線形方程式に対して弱ハルナック不等式を得ることによって,解のヘルダー連続性を得た.弱ハルナック不等式は,シャウダー正則性や可積分性を示す際にも重要な役割を果たすことが知られており,その前段階が解決された. また,自由境界問題に対する粘性解の応用として,近似解の収束率及び,両側障害物問題と勾配拘束問題の同値性を示した.勾配拘束問題に関してはベルマン型方程式及び,特異楕円型方程式に対する比較原理も示した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を基に,p-ラプラス方程式を含むような完全非線形方程式に対する粘性解のシャウダー評価および積分評価を行う. 自由境界問題に関してはより一般の勾配拘束条件や,放物型方程式も扱う. また,粘性解の一つの応用として,距離の定義を変えたフィンスラーラプラシアンに関する研究を行う.
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