2016 Fiscal Year Annual Research Report
森川海の連続性に着目したニホンウナギの回遊生態の解明と保全に関する研究
Project/Area Number |
16J01523
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
板倉 光 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ニホンウナギ / Anguilla japonica / 降河回遊 / 回遊可塑性 / 成熟サイズ・年齢 / 系外資源 / テレメトリー / 環境DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
ニホンウナギの漁獲量は近年激減しており、資源の保全が緊急の課題となっている。本種は沿岸から河川下~上流域にかけて広く分布しているため、本種の生息には森川海の繋がりが重要であると言える。本研究は、ニホンウナギの降河回遊生態について、森川海の繋がりに着目して理解しようとするものである。本年度の主な研究成果を以下に示す。(1)島根県神西湖において採集した黄・銀ウナギについて、耳石のSr/Caのパタンから回遊型を推定したところ、海ウナギが41%、汽水ウナギが44%、川ウナギが15%であった。銀ウナギの全長と年齢には大きなバリエーションが認められ、雌では全長504~918mm、年齢4~22歳、雄では465~535mm、年齢2~10歳であった。(2)利根川の淡水域で採集した個体を利用し、その胃内容物から出現したミミズ類の出現と降雨との関係性を解析したところ、降雨からの日数が少ないほどミミズ類が胃内容物から出現することが分かった。すなわち、陸から河川へのミミズ類の供給は降雨と密接な関係があることが示唆された。(3)利根川本流において、テレメトリーによる銀ウナギの降河回遊のモニタリングを行ったところ、利根大堰を通過した個体の割合は25%、河口堰を通過した個体の割合は100%であり、そのうち90%が魚道を利用して移動していた。銀ウナギは河口堰を超えて降河することができるものと考えられる。(4)全国複数河川の上~下流にかけて、電気ショッカーを用いた採集調査から個体数密度を求め、同地点のニホンウナギの環境DNA濃度を測定し、GLMMを用いて解析したところ、個体数密度が高い地点ほど環境DNA濃度が高いことが分かった。今後、本手法により、広域に亘るニホンウナギの河川内分布を簡便かつ正確に把握することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
神西湖におけるサンプリング、分析、テレメトリー実験、など当初計画していた内容を全て実施することができた。それに加えて、環境DNAを用いた分布調査手法の有効性を検討することができた。このため、今後のさらなる研究の進展が見込まれるため、上記の評価を下した。
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Strategy for Future Research Activity |
神西湖で採集された個体の成長パタンの解析を行い、多様な成長戦略パタンと成熟や成熟サイズとの関係性を検討していくとともに、来年度も試料採集を継続し、サンプル数を増やしていく予定である。今年度得られた結果は、来年度の学会で発表するとともに、国際誌に投稿するための準備を行う。
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Research Products
(21 results)