2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J01585
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉浦 伸太郎 熊本大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 宇宙再電離 / 21cm線 / 電波干渉計 / 相互相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は主に、宇宙再電離に対する活動銀河核の寄与、21cm線とLAEの相互相関の観測可能性、MWAの観測データを用いた21cm-CMB相互相関の3つである。 まず、宇宙再電離に対する活動銀河核の寄与を調べた研究を昨年度より行っていたが、その結果が論文として海外の学術誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Society(MNRAS)に採用された。 次に、21cm線とLAEの相互相関の観測可能性及び前景放射の観測誤差への寄与を調べた研究では、5月にオーストラリアのメルボルン大学に滞在し、電波干渉計MWAのデータ解析を行っている研究者の方々と議論を行った。その後、21cm-LAE相互相関がMWAもしくは次世代望遠鏡SKAとすばる望遠鏡のHSCを組み合わせることで観測可能であることを示した。さらに、21cm線の観測に伴う前景放射が相互相関の観測で誤差として寄与することから、前景放射と観測のモデルを利用して、その寄与の大きさを見積もった。これらの結果はそれぞれ論文としてまとめられ、MNRASに投稿された。前景放射の影響を調べた論文は既に採用されている。また、これらの結果を9月に北海道大学で行われた日本天文学会、10月にクロアチアで開かれたIAU主催の研究会で発表した。 次に、21cm線とCMBの相関を計算した研究では、5月のメルボルン大学への滞在に加え、12月にもメルボルン大学へ滞在し、共同研究者の方と議論を行った。また、この研究を9月に名古屋大学で行われたMWA-jpミーティングと長万部で行われた研究会で発表した。さらに、12月にシドニーで行われたMWA project meetingで口頭発表を行い、連続して開催された低周波観測に関する研究会でもポスター講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MWAグループとの共同研究を進めており、主にオーストラリアの研究者の方と研究を行い、その成果を論文としてまとめることができたため。主な成果は宇宙再電離21cm線と他の観測量との相互相関に関する研究である。遠方銀河の一種であるLAE相互相関の研究では将来の観測可能性を調べ、実際にプロジェクトが動き出す根拠となった。関連する論文は2編あり、その内自身が第一著者として作成した論文はすでに海外の学術誌に採択され、掲載が決定している。また、第二著者として作成した論文も同じ学術誌に投稿中であり、採択目前である。 21cm線と宇宙マイクロ波背景放射との相関では、日本人としてはじめてMWAのデータを使用した研究を行うことができた。この研究は論文としてまとめられ、現在では海外の学術誌に投稿中である。また、これらの研究のなかでMWAグループを中心に海外の研究者の方々とのネットワークを広げることができた。 また、本年度は、第一著者として作成した他の2編の論文が海外の学術誌に採択されている。活動銀河核による宇宙再電離への影響を調べた論文では、今後再電離のシミュレーションを作成するためのプロトタイプの計算を完成させた。また、高速電波バースト(FRB)の分散遅延を用いた宇宙再電離探査の論文では、発案から論文作成の殆どを自身の手で行うことができた。 日本独自の宇宙再電離に関する準解析的シミュレーションの作成に関しては、現在プロトタイプの作成が行われており、鋭意作成中である。ただし、当初の計画に比べシミュレーションの作成が若干遅れている。 以上のように、複数の研究を完遂させ、同時に現行の研究も進行中であることから、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年までに作成予定であった準数値シミュレーションの開発を行う。プロトタイプの作成は終わっているので、半年以内にテストや結果のまとめを行い、論文作成を行う。また、このシミュレーションは前年に作成した活動銀河核のモデルなどを搭載し、より有用なシミュレーションを開発し、最終的にはオープンコードとして世界に公表する。さらに、作成したシミュレーションを用いてライマンアルファエミッター(LAE)と21cm線の相互相関の計算やその観測可能性の議論を行う。 また、若手研究者海外挑戦プログラムにより、5月から8月までオーストラリアのメルボルン大学へ滞在予定である。この滞在では主にMWAのデータを使用したデータ解析を行う。現在、これまで解析されていなかったデータの解析を進めているので、こちらも半年のうちに結果をまとめる。また、当初予定していたように、解析したMWAのデータと、作成した再電離のシミュレーションの結果を比較することで、宇宙再電離のモデルに制限を与える。さらに、行なった解析の結果をMWAやSKAなど低周波電波観測に関連する研究会で発表する。 また、オリジナルのデータ解析パイプラインを作成する。このパイプライン作成にはすでにMWAのグループで使用されているデータ較正のソフトウェアを組み入れる。そのために、メルボルン大学での滞在中に現地の研究者と議論を行う。また、オーストラリアのカーティン大学では地球の電離層が電波観測に及ぼす影響を研究している。7月にカーティン大学へ滞在し、電離層に関する最先端の研究を学ぶ。 また、前年に作成した21cm-CMB相互相関に関する論文の修正を行い、採用、掲載を目指す。また、同時に関連する共同研究を進め、将来の21cm線の相互相関の有用性をより詳細に調査する。
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Research Products
(9 results)