2016 Fiscal Year Annual Research Report
結合次数の線形応答関数に基づいた酵素反応場設計法の開発
Project/Area Number |
16J01692
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
満田 祐樹 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 線型応答関数 / 反応性解析 / 自由エネルギー計算 / 分子動力学計算 / 反応経路探索法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に沿って、線形応答関数を利用した反応性解析のため、その妥当性の検証を行っていました。具体的には、アルドースリダクターゼとHIV-1 protease の計算、およびQM/MMなどを利用した中間状態を元にして、他の手法との比較を行っていました。その中で、タンパク質の構造や化学反応の中間状態を調べる上で重要となる自由エネルギーにおける鞍点探索の標準的な手段が確立されておらず、 従来の方法では計算できないことが明らかとなりました。そこで鞍点や中間体、安定点の構造を明らかにすることは、反応場計算と比較するために必要不可欠であるため、新たに鞍点探索をするためのアルゴリズムを開発しました。このアルゴリズムはMDシミュレーションのアンブレラサンプリング手法と量子化学計算の反応経路探索法を組み合わせた、全く新しい手法であり、この手法を利用することで自由エネルギーの側面から反応経路探索が可能となるため、様々な化学反応の機構解明に重要な役割を果たすと考えました。このアルゴリズムを確立するための追加研究は重要な案件であると判断し、プログラムの作成とアルゴリズムの確立を優先して行いました。一旦完成したプログラムによって計算した結果を学会で発表し重要性を確認しましたので、平成29年度において論文として発表する予定です。また、結合次数の線型応答関数については、論文発表を行うことで、プライオリティの確保を行いました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究業績概要」で述べたとおり、自由エネルギー上の反応経路探索は未だに未解明であることに気づいたため、その解明に乗り出すことになりました。本年度ではその方策について、MDシミュレーションのアンブレラサンプリング手法を用いた自由エネルギー計算と非調和下方歪みを利用した反応経路探索とを組み合わせることで計算できるというアイディアを元に、実際にプログラムを作成して計算実行に導くこととなりました。その点において、我々の手法が本当に有効であるのかを調べるのに時間を要してしまいました。その理由として、自由エネルギー反応経路には未知の部分が多く、より基礎的なテスト計算による検証が必要であるという点があります。そのため、検証としてアラニンジペプチドおよびトリペプチドについて、真空中の2次元および4次元の反応経路探索をしました。さらに、1からプログラムを書く必要があり、その十分なデバックが必要となります。特に並列処理の部分について、MDシミュレーション、アンブレラサンプリング、超球面探索の3点をうまく組み合わせる必要があり、その点について1から勉強して実践したため、時間を要してしまいました。しかしながら、この検証とプログラム作成によって、自動的に反応経路探索が出来るようになるため、プログラムが完成すれば大幅な研究速度の高速化が見込まれ、その影響は絶大であると考えたため、今回は大幅に方針を変えて研究を行いました。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、平成29年度において論文として発表します。また、前年度では検証としてアラニンジペプチドおよびトリペプチドについて、真空中の2次元および4次元の反応経路探索をしましたが、水中のアラニントリペプチドについての4次元自由エネルギー反応経路探索を行います。この計算によって検証とアルゴリズムの改善を行い、6次元や10次元の探索について発展させます。プログラムの完成度を加味しながら、アルドースリダクターゼとHIV-1 protease の計算、およびQM/MMなどを利用した中間状態について計算し、線型応答関数との比較を行います。
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Research Products
(5 results)