2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J01705
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀河 力也 九州大学, 薬学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | エステル交換反応 / 三級アルコール / 鉄 / サレン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度において行った研究のうち、学会誌への発表や学会発表のためのデータコレクションに以外の内容を以下にまとめる。 学会誌への発表の中で、無置換の鉄(III)サレン錯体を触媒として用いた二つの反応を報告した(Chem. Eur. J. 2016, 22, 12278-12281)。一つ目の反応がメチルエステルを用いたアミノ基共存下におけるヒドロキシ基選択的な反応、二つ目の反応がメチルエステルと三級アルコールを用いたエステル交換反応である。二つ目の反応は、触媒的なエステル交換反応により合成化学上有用なtert-ブチルエステルを剛性可能な優れた反応であるが、まだ反応性が不十分であり反応条件が厳しい点に改善の余地を残していた。そこで本年度はメチルエステルと三級アルコールを用いたエステル交換反応において、無置換の鉄(III)サレン錯体より高い触媒活性を持つ錯体の開発を目指し、反応温度を下げた反応条件において触媒活性の検討を行った。 無置換の鉄(III)サレン錯体より高活性な触媒を開発するために、学会誌に発表した研究から得られた知見を基に種々の検討を行った結果、いくつかの錯体において無置換の鉄(III)サレン錯体より高い触媒活性を有することを見出した(知財の関係上、詳細な検討については省略する)。しかしながら、より穏和な条件下で反応を行うには未だに触媒活性が不十分であるため、これまでに得られた知見を基に平成29年度は研究計画に記載したリンカーで連結した錯体などの検討を行い、求核剤と求電子剤の近接効果によるさらなる触媒活性の向上を目指す。また本検討により十分な触媒活性を有する錯体を開発した後、キラルユニットを導入した錯体の合成も行い、不斉反応への応用に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度はメチルエステルと三級アルコールを用いたエステル交換反応において、無置換の鉄サレン錯体よりも高い触媒活性を有する錯体の開発を目指して研究を行った。検討のために種々の錯体の合成を行ったが新規錯体が大半を占めており、錯体の合成や精製・分析において当初の予定よりも時間がかかり、触媒活性の検討が少し遅れた。しかしながら、いくつかの錯体においては無置換の鉄サレン錯体よりも高い触媒活性を有することを見出し、また鉄サレン錯体についての知見を得ることもできたため、本来の目的はおおむね達成できたと考えている。研究計画に記載したリンカーで連結した錯体などの検討までは行うことができなかったため、平成29年度はリンカーで連結した錯体を始めいくつかの錯体を合成し、触媒活性の検討を行う予定である。 また学会誌への発表や学会発表のためのデータコレクションにも一部の時間を割いたため、研究計画に記載した内容の全てを達成することはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は平成28年度に検討を行うことができなかったリンカーで連結した錯体を始めいくつかの錯体を合成し、近接効果による触媒活性の向上を目指す。本研究により高い触媒活性を有する錯体の開発を達成した後、研究計画に記載したキラルユニットを導入した錯体の合成を行い、アズラクトンを用いた動的速度論的分割を利用したキラルなα-アミノ酸エステル誘導体の合成を始めとするいくつかの不斉反応への応用も検討する予定である。 また平成29年度は研究計画に記載した二つ目のテーマについても検討を行う予定である。平成28年度の研究で得られた知見を基にヒドロキシ基とアミノ基の共存下における化学選択的かつ位置選択的なアシル化反応の開発を目指す。本テーマについては一つ目のテーマと比べてさらに複雑な錯体を合成する必要があると考えられるため、錯体の合成や精製・分析においては細心の注意を払い検討を行う必要があると考えられる。本テーマについては平成30年度にも引き続き検討を行う予定であるので、平成29年度の段階でアミノ基を認識する部位を含む錯体の合成までを達成したいと考えている。
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Research Products
(4 results)