2016 Fiscal Year Annual Research Report
進化工学と有機合成の融合による革新的蛍光プローブの開発
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16J01710
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
寺井 琢也 埼玉大学, 理工学研究科, 特別研究員(SPD) (00508145)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 進化分子工学 / ペプチド化学 / 蛍光センサー / 合成化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、進化分子工学の基本的な実験手法の習得を行った。具体的には、ペプチドとそれをコードする核酸が共有結合した複合体分子(cDNA display分子)を作成して淘汰実験に用いるべく、ペプチド・核酸複合体を形成させるためのコンストラクトの設計法、無細胞転写・翻訳系の取扱い、磁気ビーズを用いた精製、PCRによる結合配列の増幅などを習得した。続いてcDNA display法を用いた進化分子工学研究の実施例として、脂質二重膜に結合するペプチドのセレクションと機能解析を行った。アルギニンを多く含む30アミノ酸からなるランダムペプチドをcDNA displayへと変換し、人工脂質二重膜(リポソーム)と反応させて結合分子を回収・増幅するサイクルを繰り返した。合計6サイクルの実験の後、クローニングを行って配列を解析した結果、N末端側に疎水性残基を比較的多く含みC末端側にはアルギニンを多く含む特定の配列(lipid membrane binding peptide: LB-1)の獲得に成功した。更に、LB-1を用いて目的分子(タンパク質等)を簡便にリポソーム表面に結合させる系の構築を行った。 上記の研究と並行して、加水分解酵素基質の網羅的探索と可視化にも取り組んだ。まずペプチドのビオチン化とPCRを利用して切断を検出する系を考案し、TEVプロテアーゼをモデル酵素として既知の基質配列を含むcDNA display分子と陰性対照の分子を作製した。しかしこれを酵素反応に供したところ、期待とは異なり基質配列と対照配列との間に有意な差が見られなかった。そこで、ビオチン化とは異なる手法で基質探索を行う実験系を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、cDNA display法を始めとする進化分子工学の基本的な実験技術を習得することができた。また実際の研究において多くのセレクションを実施し、成果を論文にまとめることができた。一方、蛍光プローブ開発に関しては当初想定していなかった課題もいくつか浮かび上がってきた。例えば、ペプチドを化学修飾する場合の反応効率が必ずしも良くない、少量のcDNA display分子を用いて酵素反応等を行う場合、容器やビーズへの吸着が無視できない、あるいは未反応体と生成物を分離するのが難しい、等である。今後はこれらの課題を解決すべく、種々の条件検討を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、標的分子の存在下で蛍光強度が変化するプローブを進化工学的に開発することに注力する。具体的には、上述の課題を克服することで大規模ペプチドライブラリーから酵素反応基質を見出す系を構築すると共に、プローブ化を実施する。また環境感受性蛍光分子等の活用によって、標的タンパク質に結合することで光学特性が変化するプローブ開発を目指す。
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Research Products
(10 results)