2017 Fiscal Year Annual Research Report
高感度化した極低温磁化測定装置による低次元量子スピン系の基底状態の研究
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16J01784
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 洋平 東京大学, 物性研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 臨界指数の普遍性 / 極低温磁化測定 / 低次元量子スピン系 / 低温物性 / 磁性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主にフェルダジルラジカル系擬一次元磁性体3-I-Vと3-Cl-4-F-Vについて,新たな測定手法や高感度化した極低温磁化測定装置を用い,飽和磁場近傍の量子臨界性について研究をおこなった. (1)極低温磁気熱量効果測定による3-I-Vの量子臨界性の再検証 前年度までに磁化,比熱測定を用いて3-I-Vの飽和磁場近傍の三次元秩序相境界を決定していたが,両者には転移温度の定義の違いによるずれがあった.そこで磁場温度相境界を直接観測できる強力な手法である磁気熱量効果測定を行うことで妥当な相境界を検証した.本測定には微小単結晶試料を感度よく測定できるように測定用セルを自作して用いた.その結果,全測定法でほぼ完全に一致した相境界を定義づけることに成功し,1 K以下の広い範囲で磁場に線形な振る舞いをしていることが分かった.この振る舞いは関連する理論との比較から,強磁性鎖をベースとした S = 1/2 スピン梯子鎖に特有の臨界性を反映している可能性が高く,臨界指数の普遍性の観点から重要な成果である. (2)極低温磁化・比熱測定による3-Cl-4-F-Vの量子臨界性の研究 3-Cl-4-F-Vは3-I-Vと類似した相互作用パラメータを持つが,先行研究では3-I-Vと異なり温度軸方向に二段階の相転移を伴う磁気相図が得られていた.しかしながら,飽和磁場近傍は十分に測定が行われておらず,二つの相転移境界の範囲やその量子臨界性について検証するため,より詳細に極低温磁化,比熱測定をおこなった.その結果,飽和磁場近傍の二段階の相転移が消失する磁場に関して0.05 Tの精度で決定することができた.その結果,この磁場よりも高磁場側の低温相のみになった領域で,相境界が3-I-Vと同様の磁場に線形な振る舞いをすることが分かった.これは前述したこれら物質群の臨界指数の普遍性を補強する意味で重要な成果である.
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Research Progress Status |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(5 results)