2016 Fiscal Year Annual Research Report
抗がん活性を有するジテルペン配糖体コチレニンAおよび類縁体の収束的合成法開発
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16J01810
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
桑田 和明 慶應義塾大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | コチレニンA / 収束的合成 / 天然物合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
コチレニンAは優れた抗がん活性を示し、新規抗がん剤のリード化合物として期待されている。標的タンパク質の同定および新規抗がん剤開発研究に向け、コチレニンAの供給が望まれるが、生産菌の変異によりコチレニンAの入手は困難である。そこで本研究では、未だ達成されていないコチレニンAの化学全合成による供給を目指した。コチレニンAの量的供給および生化学研究に向けた類縁体合成を可能とする、A環部セグメントとC環部セグメントを連結した後、環化によって中央のB環部八員環を構築する、収束的な合成ルートを立案した。 まず、A環部セグメントであるトランスオレフィンを有するビニルスズを17工程で合成した。一方、8工程でC環部セグメントであるビニルトリフラートを得た。これらA,C環部セグメントのスティーレカップリングは、ホスフィン配位子を有するPd触媒では全く進行しなかったが、NHC配位子を有するPd触媒を用いる条件により、良好な収率で目的とするカップリング体を与えた。しかし、続くジヒドロキシ化の立体および位置選択性は全く発現しなかった。そこで、オレフィンのジヒドロキシ化に先立って八員環を構築すべく、A環部セグメントとしてシスオレフィンを有するビニルスズを用いることとした。。 シス体のビニルスズを合成し、C環部セグメントとスティーレカップリングで連結した。続いて、分子内マクマリーカップリングによる八員環形成を試みたが、目的とする環化は進行しなかった。望む反応が進行しないのはC環部の立体障害が原因と考え、より立体的な影響を受けにくいラジカル環化を検討することとした。A,C環部のカップリングで得られる中間体に対しアルキンとチオカルボニルイミダゾールを導入し、環化前駆体の合成を完了した。今後、この基質を用いるラジカル環化を検討し、コチレニンAが有するB環部八員環を構築する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本合成の鍵段階の一つであるA,C環部セグメントのスティーレカップリングは、ホスフィン配位子を有するPd触媒では目的物を与えなかった。しかし、反応条件を詳細に検討した結果、NHC配位子を有するPd触媒によって、高い収率で目的物が得られるようになった。当初計画したマクマリーカップリングによるB環部八員環の構築は困難であったが、ラジカル環化による八員環構築を新たに立案し、環化前駆体を合成した。今後さらなる検討によりコチレニンAの全合成を達成できると考えられ、本研究は概ね順調に進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
合成した環化前駆体のラジカル環化でコチレニンAのB環部を構築する。この際、高い収率で目的物が得られるよう、反応条件を検討する。得られた環化体にエポキシ化で酸素官能基を導入しアグリコンの合成を終えた後、糖部位と連結してコチレニンAの全合成を達成する計画である。 コチレニンAの合成達成後は、同様の手法を用いてコチレニンA類縁体および分子プローブの合成を検討する。
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