2016 Fiscal Year Annual Research Report
細菌べん毛モーターの回転力産生のための構造的基盤の解明
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16J01859
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹川 宜宏 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 細菌べん毛 / モーター / 固定子 / 回転子 |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌べん毛モーターの機能と構築における詳細な分子メカニズムを解明するために、エネルギー変換ユニットとして働く固定子を構成するタンパク質MotAと、モーター構築の足場として働くMSリングを構成するタンパク質FliFについて、生化学的な解析および立体構造解析を行った。 MotAは、その相互作用パートナーであるMotBが存在しない時でも単独で四量体を形成することを分子間架橋実験によって明らかにした。部位特異的システイン置換変異体の解析により、MotA構造の表面に露出している部位を同定した。電子顕微鏡単粒子解析によりMotAの構造を決定し、回転力を生み出す際に重要とされるMotAの細胞質領域の構造を初めて観察することに成功した。 FliFについてその全長および部分断片の発現・精製系を確立した。特に高い可溶性を示す断片を同定し、精製、結晶化、X線構造解析により2.3オングストロームの分解能で構造を決定した。同FliF断片は二つのドメイン(ドメインI、ドメインII)から構成され、ドメインIは病原性細菌が持つIII型分泌装置構成因子PrgH内のドメインと、ドメインIIはIII型分泌装置構成因子PrgK/EscJや枯草菌の胞子形成関連因子SpoIIIAH内のドメインと、構造的な類似性を示すことを明らかにした。ドメインIIはMSリング内の内側のリングを形成し、べん毛モーターロッドタンパク質の集合のための足場として機能すると考えられた。 その他、固定子の安定的な機能に必要なMotXについてランダム変異体解析を行い、MotXにはべん毛モーター機能以外に、細胞形態制御にも関係する新規の機能があることを明らかにした。また、べん毛の数の制御のために必要な新規因子としてHubPの関与を発見し、べん毛数制御における新規モデルを提唱した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、固定子タンパク質MotAと回転子タンパク質FliFの両者について、部分的に立体構造を決定することに成功した。MotAについては電子顕微鏡/単粒子解析による構造解析のみならず、X線結晶構造解析を目標とした結晶化条件の検討も行っており、MotAタンパク質の精製条件を見直すことで、より高純度かつ高い単分散性を保った精製条件を決めることに成功した。精製条件の最適化により、これまで検証してきたよりもより様々な条件において結晶の析出が見られた。 またFliFについては当初の予定通り、精製するために最適な部分断片FliF(58-213)を同定し、結晶化・X線結晶構造解析により2.3オングストロームの分解能で回折データが得られた。部位特異的なメチオニン変異導入およびセレノメチオニン置換変異体の作成により位相を決め、構造を決定した。FliF(58-213)は二つのドメインから構成され、それぞれをドメインI、ドメインIIと名付けた。ドメインIは病原性細菌が持つIII型分泌装置構成因子PrgH内のドメインと、ドメインIIはIII型分泌装置構成因子PrgK/EscJや枯草菌の胞子形成関連因子SpoIIIAH内のドメインと、それぞれ構造的な類似性を示すことを明らかにした。ドメインIIはべん毛モーター基部に存在するMSリング内の内側のリングを形成すると考えられ、べん毛モーターロッドタンパク質(FliEなど)の集合のための足場として機能すると考えられた。ドメインIおよびドメインIIの構造が明らかになったことで、MSリングはドメインIからドメインVまでの5つのドメインから構成されるモデルを提唱した。 これら以外に、構造以外の知見からべん毛モーターの機能と構築に必須なタンパク質MotXおよびHubPについても解析を行うなど、研究の進捗として順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
固定子タンパク質MotAの精製条件・結晶化条件の最適化、高分解能X線回折像の測定を継続して行う。可溶化および精製に用いる界面活性剤の種類・濃度の条件をより詳細に検討し、再現度の高い高分解能X線回折像の測定を目指す。特に結晶化法についてはこれまで重点的に行なってきた蒸気拡散法だけでなく脂質キュービックフェイズ法を利用することで、より好条件なMotAの結晶化を行う。同時にセレノメチオニン置換変異体についても同様に結晶化・X線回折像測定を行い、位相決定および構造決定を行う。得られた構造を元にMotA変異体を作成し、過去に確立したキメラMotA大腸菌機能解析系を用いることで、べん毛モーター固定子の構造-機能相関を明らかにし、べん毛モーターのエネルギー変換に関して分子レベルでのメカニズムを明らかにする。 FliFについては、現在すでにドメインIIIの大量発現・精製系を確立しており、これの結晶化、X線回折測定、構造決定を試みる。ドメインIIIはMSリングの外側に位置するリングを形成すると考えており、すでに明らかにしたドメインI、ドメインII、過去に明らかにされているドメインV、単純なベータ-ターン-ベータ構造を持つと考えられるドメインIVと合わせることで、MSリングの全体構造を明らかにし、べん毛モーター構築のための足場形成の分子レベルのメカニズムを解明する。また、FliFを足場として構築されるロッド構成タンパク質FliEについても大量発現・精製系をすでに確立したため、FliEについても結晶化・構造解析を試みる。すでに明らかになったドメインI、ドメインIIの構造を元に変異体を作成し、べん毛モーター構築への影響を調べることで、FliF自身のリング形成能やべん毛輸送タンパク質の集合能、ロッドタンパク質集合のための足場としての機能それぞれについて、構造-機能相関を明らかにする。
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[Journal Article] The tetrameric MotA complex as the core of the flagellar motor stator from hyperthermophilic bacterium2016
Author(s)
Norihiro Takekawa, Naoya Terahara, Takayuki Kato, Mizuki Gohara, Kouta Mayanagi, Atsushi Hijikata, Yasuhiro Onoue, Seiji Kojima, Tsuyoshi Shirai, Keiichi Namba, Michio Homma
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 31526
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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