2016 Fiscal Year Annual Research Report
マルチフェロイクスを用いた超低消費電力ユニバーサル磁場センサの創製
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16J01892
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
一ノ瀬 智浩 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | マルチフェロイック / ビスマスフェライト / 電気磁気効果 / エピタキシャル薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
マルチフェロイック材料に特有な電気磁気効果の測定に向けて試料作製および評価を行っている. ターゲットとして化学量論組成に近いビスマスフェライトを用いてRFマグネトロンスパッタ法による試料作製を行い, ビスマスフェライト薄膜の結晶構造, 表面平坦性, 電気伝導特性, 強誘電特性の酸素分圧依存性を調べた. 組成分析の結果から成膜時の酸素分圧に伴って膜の組成が変化することが分かっていたが, 酸素分圧が小さいときにビスマス酸化物, 酸素分圧が大きいときに鉄酸化物の異相が析出し, 異相形成の様子からも膜組成が変化することが示唆された. 酸素分圧が3.6-7.1%のとき単相のビスマスフェライトが得られ, 特に4.5-5.4%のとき平均表面粗さが0.5 nm以下の平坦な膜が得られた. ビスマスフェライト薄膜は化学量論組成のとき平坦になることが報告されており, 化学量論組成に近い膜が作製できたと考えられる. 電気伝導特性の評価では100 MΩcm程度の電気抵抗率が得られ, 比較的良好な絶縁特性を示した. 平坦な表面が得られた条件(酸素分圧~5%)で作製した試料について強誘電特性を評価した結果, 良く飽和した強誘電ヒステリシスループを観測することができ, 先行研究と同程度の自発分極値を得ることに成功した. 強誘電ヒステリシスループおよび自発分極を電気的に測定する場合, 電極下すべての膜質が測定に影響するため, 均質な高品質ビスマスフェライト薄膜が得られたと考えられる. 以上のように化学量論組成に近いビスマスフェライトターゲットを利用して成膜条件を探索することで良好な表面平坦性, 電気伝導特性および強誘電特性を示す薄膜試料が得られ, 電気磁気効果の測定に向けた試料の作製条件を決定することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度に作製した薄膜試料は200 nmと比較的厚く, さらに薄膜化した際の特性変化を調べる必要がある. また, 磁気特性についてビスマスフェライトに含まれる鉄の磁気モーメントを増大させる条件や機構が未解明であり, 今後も試料作製および評価を行う必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
さらなる膜質改善および電気磁気効果の観測を行う. 成膜装置の仕様上, 酸素分圧をさらに細かく制御することは困難であるため, 成膜時の基板温度等を変化させることで膜組成を微調整してさらなる膜質改善を図り, 薄膜化した場合においても膜質を維持する. 一方, 今まで困難であった強誘電分極の観測ができる程度に膜質が改善されたため, 膜質改善と並行して電気磁気効果の測定も行う. 現在, 磁場に対する微小電圧変化の測定系を構築しており, 膜質と同時に測定系も改善することで電気磁気効果の観測を目指す.
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