2016 Fiscal Year Annual Research Report
交尾体位とオス生殖器形態の協調的な進化に関する研究
Project/Area Number |
16J01904
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
稲富 桃子 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
Keywords | 協調的進化 / 双翅目昆虫 / 雄生殖器回転 / 交尾体位 / キイロショウジョウバエ / ネッタイシマカ / Myo31DF / 求愛行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究では、キイロショウジョウバエとネッタイシマカの二種類のモデル双翅目昆虫を使用している。 キイロショウジョウバエのMyo31DFK2突然変異体系統では、かなりの頻度で雄生殖器の回転に異常の見られる個体が現れることが知られている。そこで、これらの異常生殖器回転雄を、正常な生殖器を持つ雌と交配させ、その交尾の成功率を調べた。その結果、「90°以上生殖器の向きのずれた雄は交尾できない」ということが示唆された。このことから、雄上位型交尾体位をとるキイロショウジョウバエにとって「適切な雄生殖器の向きが交尾の前提条件である」ということが示唆された。 また、求愛・交尾の様子を一時間動画撮影し、雄生殖器のずれによって行動に変化が起こるかどうかを解析した。使用した雌は全て野生型、雄は全てMyo31DFK2であり、生殖器のずれが0°(正常)のものと、180°のものを用いた。 まず、生殖器のずれが0°の雄では、90%が観察時間内での交尾に成功していた。一方、180°ずれた生殖器を持つ雄で、交尾に成功したものは一例もなかった。しかし、これら2群での「雌への求愛行動を開始した時間」に有意差はなかった。また、観察時間の最初の10分間で求愛強度(観察時間内に、雄が雌に対する求愛行動に費やした時間の割合)を求めたところ、この値もこれら2群の間での有意差は見られなかった。なお、これらの観察において、本来の交尾体位である雄上位型体位以外の交尾体位をとろうとするペアは一組も見られなかった。以上の結果から、雄生殖器回転の異常は求愛行動には影響しないことが示唆された。 ネッタイシマカについて、東京慈恵会医科大学熱帯医学講座で共同研究を行い、Myo31DFK2オーソログであるAAEL012631遺伝子のKO系統をinjection実験にて作出した。現在これらの突然変異体のホモ系統化を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネッタイシマカについて、AAEL012631KO変異体を作出することが出来た。計画書に記載していたドナープラスミドとは異なる蛍光タンパク質(DsRed)を用いることになった等の変化はあるが、おおむね順調であるといえる。 キイロショウジョウバエについては、本年度分は元々計画書に詳細は記載していなかったものの、交尾行動の観察等、当初に想定していたこと以上のことが行えていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
キイロショウジョウバエについて、現在、「生殖器の向きそのものが交尾にとっての必要条件」であるかどうかを確かめるために、「仰向けにしたメスに対しオスが交尾し、繁殖することが出来るか」を実験している。この実験では、メスを仰向けに固定した状態で、生殖器が背腹軸方向に反転したオス(180°ずれた生殖器のオス)と同じ飼育容器に入れ、一晩放置した後にメスを解放し、次世代のハエを生むことが出来るか調べる計画である。現在は、メスの固定条件に付いて検討中である。 ネッタイシマカについて、まずはAAEL012631系統のホモ系統化を完了させる。その後、変異体オスの生殖器回転の様子の観察、交尾体位の異常の有無の観察を行う予定である。生殖器回転の観察については、現在野生型ネッタイシマカを用いて観察動画撮影の条件検討を行っている。
|
Research Products
(3 results)