2017 Fiscal Year Annual Research Report
交尾体位とオス生殖器形態の協調的な進化に関する研究
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16J01904
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
稲富 桃子 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 進化的協調性 / 双翅目昆虫 / 交尾体位 / 雄生殖器回転 / キイロショウジョウバエ / ネッタイシマカ |
Outline of Annual Research Achievements |
キイロショウジョウバエについて、Myo31DF突然変異体系統と遺伝的背景を均一にしたコントロール系統を作製し、この系統と様々な回転角度のMyo31DF突然変異体系統のオスの交尾行動解析を行ったところ、観察時間内の交尾成功率について、control系統のものは56%、生殖器のずれが45°のMyo31DF突然変異体系統オスでは10%が交尾に成功していた。次に、「メスへの求愛行動を開始した時間」を計測したところ、Myo31DF突然変異体系統の45°ずれたオスもcontrol系統のオスも、Myo31DF突然変異体系統のずれ0°やするずれ180°のオスの結果と比べて有意差はなかった。また、観察時間の最初の10分間で求愛強度を求めたところ、今のところ原因は不明だが、control系統オスの値は生殖器の向きが正常なMyo31DF突然変異体系統のオスと比べて有意に下がった。しかし、ずれが45°のMyo31DF突然変異体系統オスは、ずれが0°、ずれが180°のものと比べて有意差は見られなかった。なお、これらの観察において、本来の交尾体位であるオス上位型交尾体位以外の交尾体位をとろうとするペアは一組も見られなかった。このことから、「回転角度の変化は、求愛行動や交尾行動には影響しない」ことが示唆された。 またネッタイシマカについて、昨年作成し本年度系統化に成功したAAEL012631突然変異体系統について、オス生殖器回転を観察したところ、野生型では羽化24時間後にほぼすべての個体が回転完了していたのに対し、突然変異体系統では約半分が回転が完了していなかった。その後パイロット実験として、羽化後17日のオス個体の生殖器回転の様子を調べたところ、ほぼ100%回転が完了していたことから、「12631-1-1系統への変異は、オス生殖器回転にかかる時間に影響している」ことが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の実験で作成したネッタイシマカのMyosin31DF遺伝子のノックアウト突然変異体において、オス生殖器回転の異常が示唆されるデータが得られた。 また、ショウジョウバエに関しては、オス生殖器の向きと交尾能力に関するデータの取得をほぼ完了した。また、生殖器の向きが異常なオスの生殖行動を解析したビデオデータの取得も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
キイロショウジョウバエについて、交尾試行の経験によりオスの交尾成功率が変化するか、つまり学習による行動の修正が起こるか調べるため、オス生殖器が正常なものよりも「少しだけ」ずれた45°ずれのMyo31DF突然変異体系統を用いて、「野生型メスとの交尾のトレーニング」によって交尾成功率に変化が見られるかどうか調べている。もし行動が固定されている場合、これらのオスの交尾成功率に変化は見られないと予想される。また、並行して論文の準備、そして投稿を行う。 ネッタイシマカについて、現在は、12631-1-1系統のオスのオス生殖器回転にかかる時間を調べるため、羽化後0時間-48時間のオスの生殖器回転角度を調べている。この実験の結果、「生殖器回転がまだ完了していないが、精巣などは発達している時間帯」がわかれば、ショウジョウバエの実験と同様に、様々な生殖器回転角度を示すオスによる各交尾成功率の計測のための実験系を組み立てることが出来ると考える。また、もう一つのAAEL012631遺伝子KO系統(12631-6系統)においては、現在ホモ系統化を進めている。
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Research Products
(4 results)