2017 Fiscal Year Annual Research Report
地質学と津波工学の融合による津波堆積物認定手法の高度化
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16J01953
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡部 真史 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 津波堆積物 / 高波堆積物 / 数値解析 / 沿岸巨礫 / 砂質堆積物 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は最終年度で行う予定である理想地形条件上で津波・高波による土砂移動計算を行うために浸水計算モデルに土砂移動モデルを組み込み、そのモデルの精度検証を行うことを目的として研究を行った。 まず、実際の砂質堆積物の分布を再現できるかを検証するために、フィリピン、タクロバンにある2013年ハイヤン台風による波浪で形成された砂質堆積物形成の再現シミュレーションを行った。Abe et al. (2012)の実測データによれば、現地には最大層厚39cmの土砂が内陸約200mまで連続的に分布していることを明らかにしている。再現計算の結果、Abe et al. (2012)が設置した測線上の連続的な堆積物の分布距離は内陸210 mで最大層厚は40 cmであったため、現地の堆積物の分布を良好に再現できることが明らかになった。 現地の堆積物の分布を良好に再現できることは確認できたが、より詳細に精度検証を行うために、Yoshii et al. (2017)が行った全長約200 mの大型造波水路での砂質津波堆積物の形成実験の再現計算を行った。Yoshii et al. (2017)の実験では、実験前に土砂を汀線(40 m地点)から上流側40 m(0 m地点)まで設置し、ソリトン波を入射した後の地形変化を調べている。その再現計算の結果、実験の侵食・堆積の全体的な傾向を非常に良好に再現できることが確認できた。 本年度で土砂移動モデルを浸水計算モデルに組み込むができたため、3年目に行う予定である理想地形上での数値計算を行う上で必要なモデルを準備することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の目標としていた土砂移動計算を浸水計算に組み込む作業を完了することができた。また、組み込んだモデルは砂質堆積物の分布の実験値もしくは実測値ともに非常に高精度に再現できることを確認できた。そのため、当初の計画通りに研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の目標としていた浸水計算モデルに土砂移動計算を組み込み、その精度検証を行うことができた。 今後は、陸上地形勾配,海底地形勾配を様々に変化させた理想断面地形で高波,津波の浸水計算,土砂移動計算,巨礫移動計算を行なうことで,津波・高波の流体力、地形条件と堆積物の分布距離、津波・高波の遡上距離・遡上高等の関係性を明らかにする予定である。また,砂の粒径,海岸線背後の砂丘の有無等,台風時の潮位上昇によっても堆積物の分布限界が変化する可能性があるため,これらの検討も行う.計算結果は無次元数で整理した上で,その地域の津波/高波の外力に対応するそれぞれの浸水限界,堆積物の分布限界を簡易的に把握できる関係式を構築する予定である。また、理想地形条件上での計算と既往研究のレビューを同時進行で行った上で、結果をまとめ、両者の堆積物の新たな識別基準を提言する予定である。 また、理想地形条件上での数値計算結果については今年度中に結果を取りまとめ、学会発表を行う。国内外の研究者から自身の研究を達成させるためのアドバイスをいただき、かつ成果を公表するために学会には積極的に参加する予定である.
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