2016 Fiscal Year Annual Research Report
オノマトペを用いた言語・視覚・聴覚処理ネットワークの解明
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16J02023
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
郷原 皓彦 九州大学, 人間環境学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | オノマトペ / 言語処理 / 視聴覚統合 / 運動事象知覚 / 空間定位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はオノマトペが運動事象知覚などの知覚・認知に与える影響について多角的に検討することで,オノマトペの認知処理メカニズムおよび言語・視覚・聴覚のネットワーク的処理を解明することを目的としている。本年度は以下の二つの点について検討を行った。 (1)オノマトペによる運動事象知覚の変容 運動事象知覚を必要とする刺激の一つである,交差・反発刺激に対するオノマトペの影響について検討した。本年度は特に摩擦や感情を表すオノマトペの影響に焦点を当てた。実験の結果,オノマトペの表す摩擦力が強いほど反発と知覚される割合が上昇した。さらに,怒りを表すオノマトペや高い覚醒度を持つオノマトペを交差・反発刺激に同時呈示した場合でも反発と知覚される割合が増加した。これらの結果は,物理的な接触を直接表す情報の処理のみならず,比喩的な接触情報の処理や感情処理も交差・反発知覚とリンクし,その知覚的な判断に影響を与えることを示唆している。本成果は国内の学会にて発表され,九州心理学会にて優秀発表賞を受賞した。 (2) オノマトペによる運動刺激に対する空間定位の変容 運動刺激の消失位置は実際の位置より運動方向側に誤定位される。速い運動や停止を表すオノマトペを運動刺激に同時呈示し,この誤定位の度合が変容するかを検討した。その結果,停止を表すオノマトペの同時呈示により誤定位の度合が減少した。さらに,速い運動や停止を表す漢字二字熟語を呈示した時には消失位置の定位への影響が生じなかった。これは,オノマトペが特異的に運動刺激の空間定位を変調することを示唆する。本成果は国内外の学会にて発表され,査読付き国際誌に掲載された (Gobara, Yamada, & Miura, 2016)。 他にも,感情を表すオノマトペから想起される自伝的記憶に関する研究も行い,その成果は査読付き国内誌に投稿された (郷原・佐々木・山田, 投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はオノマトペが運動事象知覚に与える影響について摩擦や感情を表すオノマトペを用いて詳細に検討し,一通りの研究成果を得ることができた。しかしこれらの研究についての英語論文の執筆および投稿を本年度中に行うことができなかったため,次年度への課題としたい。 さらに,本年度はオノマトペが運動刺激に対する空間定位に与える影響についても検討し,停止を表すオノマトペが運動刺激の空間定位を変調させることを解明した。この研究は当初計画していなかったが,オノマトペによる運動知覚への影響が運動事象知覚のみならず空間定位に対しても生じるかを検討するのは,オノマトペの処理と運動知覚との統合メカニズムを解明する上で重要であると考えたため実施した。この成果については概要に記載しているように査読付き国際誌に掲載された。 以上の点から,本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の2点を予定している。 (1)オノマトペが運動事象知覚に与える影響について更に詳細に検討するとともに,研究成果について英語論文としてまとめ,投稿する。 (2)多重呈示されたオノマトペによる運動印象への影響を検討する このうち(2)については当初の研究計画では予定していなかったが,以下の理由より今後の研究に組み込む予定である。オノマトペは単独で呈示される場面のみならず,漫画の一コマのように複数個同時に呈示される場面もある。このように複数個呈示されたオノマトペに対して人がどのような認知処理を行っているかを解明することは,オノマトペの認知処理メカニズムを解明するために重要であると考えられるため,今後詳細に検討する予定である。
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