2017 Fiscal Year Annual Research Report
オノマトペを用いた言語・視覚・聴覚処理ネットワークの解明
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16J02023
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
郷原 皓彦 九州大学, 人間環境学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | オノマトペ / 言語処理 / 視聴覚統合 / 運動事象知覚 / 平均化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はオノマトペが運動事象知覚などの知覚・認知に与える影響について多角的に検討することで,オノマトペの認知処理メカニズムおよび言語・視覚・聴覚のネットワーク的処理を解明することを目的としている。本年度は以下の二つの点について検討を行った。 (1)オノマトペによる運動事象知覚の変容 「ふわり」や「すとん」などの上方向あるいは下方向の運動を表すオノマトペによる交差・反発知覚への影響を検討するため,本年度はそれに先立ち,交差・反発知覚における運動軌道による影響について検討した。運動軌道を0度;(水平),15度,30度,45度,60度,75度,90度(垂直) に操作して実験を行った結果,0度条件に比べ45度 ~ 90度条件で反発の割合が増加した。この結果は,交差・反発の知覚的な判断に運動軌道自体が利用されることを示唆している。本成果は国内の学会にて発表され,査読付き国際誌に投稿された。 (2)多重呈示されたオノマトペの認知 多重呈示されたオノマトペを人がどのように認知しているかを検討した。特に,人は物体群の構成要素の持つ特徴の平均を算出できることから (平均化),速度を表すオノマトペの速度感において多重呈示時に平均化が生じるかを検討した。その結果,遅い速度感を表すオノマトペの個数が多いときは速度感の平均化が生じたが,速い速度感を表すオノマトペの個数が多いときは多重呈示により速度感が強まった。この結果は,多重呈示されたオノマトペの認知において平均化に加え多重呈示による印象の強調が生じていることを示唆している。本研究は国内の学会にて発表された。 他にも,オノマトペから想起される自伝的記憶に関する研究や,顔文字による運動事象知覚の変容に関する研究も行い,その成果はそれぞれ査読付き国内誌に受理 (郷原他, 印刷中) および査読付き国際誌に掲載された (Gobara et al., 2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はオノマトペが運動事象知覚に与える影響についてさらなる検討を行うため,交差・反発知覚における運動軌道に着目して検討を行った。その結果,次年度で上方向,下方向の運動を表すオノマトペを用いた研究を行うための足がかりを得ることができた。さらに,交差・反発知覚における運動軌道の効果を解明したのは本研究が初であり,その点で本研究の成果は運動事象知覚研究に対しても新たな知見を提供するものであった。 多重呈示されたオノマトペの認知についても,速度感を表すオノマトペを対象として検討を行い,平均化のみならず速い速度感を表すオノマトペによる速度感の強調という新たな効果を発見した。この効果が速度感以外においても生じるかなど,今後さらなる検討が必要ではあるが,オノマトペの認知処理メカニズムの解明に深く関わる研究成果を得ることができた。 以上の点から,本研究は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の2点を予定している。 (1)オノマトペが運動事象知覚に与える影響について更に詳細に検討するとともに,一連の研究成果について英語論文としてまとめ,投稿する。 (2)多重呈示されたオノマトペの認知についてさらに詳細に検討し,一連の研究成果について英語論文としてまとめ,投稿する。
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Research Products
(15 results)