2016 Fiscal Year Annual Research Report
脳機能解明に向けたシグナル伝達の多項目同時イメージング法の開発
Project/Area Number |
16J02105
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿部 博弥 東北大学, 環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ドーパミン / ポリドーパミン / 電気化学センサー / バイオセンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脳組織、特に脳スライスから放出される2つ以上の神経伝達物質および、活動電位を同時に計測することを目標としている。測定に使用するのは電気化学的手法で、電気化学測定電極が基板上に20×20個配列した電気化学測定デバイスを使用する。これにより、各電極において、目標を達成するために、神経伝達物質を選択的に検出する方法が必要になる。 当該年度は、多項目同時計測デバイスの開発および神経伝達物質の選択的検出に向けた2つの検出システムの検討を行った。 ①多項目同時計測に向けて、2つの電位を同時に印加することが可能なCMOS電気化学センサを作製した。このセンサを利用することで、各電位で各神経伝達物質を計測することができる。当該年度では、デモンストレーションとして、神経細胞塊から放出されるドーパミンと、細胞の代謝に関連している呼吸活性を同時に評価した。この同時計測により神経伝達物質の放出と呼吸活性に強い相関性が見られないことが分かった。 また、神経伝達物質には電気化学的に活性を持たないグルタミン酸や、アセチルコリン等があり、これらを選択的に検出するために、酵素を修飾した電極を作製する必要がある。現在、酵素-メディエーター修飾電極の作製に取り組んでおり、ドーパミンとグルタミン酸の同時検出が可能なデバイスの開発に成功している。 ②生体組織中には神経伝達物質以外に様々な生体関連物質が含まれているが、窒素原子を含有した炭素電極は窒素原子を触媒点とし、神経伝達物質(ドーパミン)および生体内に混在する生体関連物質(アスコルビン酸や尿酸等)のシグナルを分離することができる。当該年度は、ドーパミンの重合体であるポリドーパミンを原料として、ポリドーパミンの薄膜を作製し、焼成することで、窒素原子含有炭素電極の作製を検討した。 以上の成果は国内、国際学会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、脳組織、特に脳スライスから放出される2つ以上の神経伝達物質および、活動電位を同時に計測することを目標としている。当該年度では、多項目同時計測可能なデバイスの開発および神経伝達物質の選択的検出に向けた開発を予定していた。 多項目同時計測可能なデバイスでは、2つの電位を印加可能なデバイスの開発に成功しており、生体組織から放出される神経伝達物質および、生体組織の呼吸活性の同時評価に成功している。デモンストレーションとして、神経細胞塊から放出されるドーパミンと、細胞の代謝に関連している呼吸活性を同時に評価した。この同時計測により神経伝達物質の放出と呼吸活性に強い相関性が見られないことが分かった。 神経伝達物質の検出に関しては、神経伝達物質には電気化学的に活性を持たないグルタミン酸や、アセチルコリン等があり、これらを選択的に検出するために、酵素を修飾した電極を作製する必要がある。この酵素修飾電極は、神経伝達物質と特異的に反応する酵素を用いることで、酵素を介して神経伝達物質が電気化学シグナルに変換するが可能である。現在、酵素-メディエーター修飾電極の作製に取り組んでおり、ドーパミンとグルタミン酸の同時検出が可能な多点計測デバイスの開発に成功している。この電気化学デバイスを用いてドーパミンとグルタミン酸の2つの神経伝達物質の同時検出に成功している。 以上の成果が得られていることから、期待通りに研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目では、1年目に引き続き多項目イメージング法の確立に向けて研究を進め、実サンプル計測に向けて、デバイスの基礎的な評価などの準備を進める。 1年目では特に多項目同時計測可能な電気化学デバイスの開発および、神経伝達物質の選択的検出のための電極修飾を行い、神経伝達物質であるドーパミンおよびグルタミン酸の同時計測に成功している。今後、選択性の具体的な評価、電気化学イメージの取得に向けて、最適な条件を検討する予定である。また、窒素含有炭素電極を用いることで、神経伝達物質の選択的検出も可能であり、2年目では、1年目で作製したポリドーパミンを窒素含有炭素材料の原料とした電極の作製と神経伝達物質の選択的検出能の評価を行う予定である。 一方で、神経伝達物質の検出と同時に活動電位の計測を予定しており、具体的には、活動電位計測に向けてVapar-Liquid-Solid結晶成長法や導電性高分子を修飾した電極の作製を行う予定である。これにより細胞組織との接触面積が拡大し、活動電位の高感度検出を目指す。 実サンプルの評価に向けてラットの脳スライスまたは神経細胞ネットワークの作製を検討する。神経細胞ネットワークに関しては、組織工学の技術を用いてライン状などの神経ネットワークパターンを作製し、単純な神経回路でのシグナル伝達の解析を行う。 以上の内容に関して、国内および国際学会にて発表、国際誌への論文投稿を予定している。
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Research Products
(9 results)