2016 Fiscal Year Annual Research Report
組織球・樹状細胞系腫瘍モデル構築にもとづく疾患関連遺伝子の探索
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16J02129
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 真之 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | cell free DNA / ランゲルハンス細胞組織球症 / 樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)に代表される組織球・樹状細胞系腫瘍のヒト疾患モデルを利用して網羅的ゲノム解析を行い、その分子病態を解明すること」にある。悪性腫瘍、特に造血器腫瘍の場合は、罹患組織(血液、骨髄、リンパ節など)から比較的軽度の侵襲で腫瘍細胞を豊富に含む検体を採取し、病態の解析を行うことができる。一方で、LCHなど組織球・樹状細胞系腫瘍は生検困難な部位に好発することや、腫瘍細胞が多くの炎症性細胞とともに浸潤するため組織における腫瘍占拠率が低いなどといった理由から、高純度の腫瘍細胞集団を得ることは極めて難しく、このことが臨床検体を用いた病態解析を困難にしている。そこで本研究では、①LCHのドライバー変異と考えられているBRAF-V600E で形質転換したヒト臍帯血由来細胞を移植した疾患モデルマウスを作製し、②その発症マウスから分離した腫瘍細胞集団の網羅的ゲノム解析によりBRAF-V600E と協調して腫瘍化に働く候補遺伝子を見つけだし、③その変異の有無を実際の患者cfDNA を用いて検証する、という逆方向の解析手法による病態解明を試みている。本年度は、当初の計画通りBRAFの野生型・変異型の配列をクローニングし、まずはマウスのB前駆細胞の細胞株であるBa/F3細胞にBRAFを野生型・変異型ともに導入し、表現型の確認を行った。また、並行してBRAF-V600E変異をもたないLCH病理組織を3検体得ることが出来たため、これらから抽出したDNAを用いて網羅的なゲノム解析を行い、BRAF以外のドライバー遺伝子の探索を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、当初の計画通りBRAFの野生型・変異型の配列をクローニングしたが、免疫不全マウスへの移植へは至っておらず、予定はやや遅れている。その主たる理由は、並行して行ったBRAF以外の新規ドライバー遺伝子変異の検索に時間と労力を要したためである。 まず、BRAF-V600Eをホモで有する悪性黒色腫の細胞株(SK-MEL-28-Luc)よりその全長cDNAをTOPOプラスミドにクローニングし、同様にBRAF野生型配列もクローニングした。この配列を、CMVプロモーターを持つレンチウイルスベクター(CSII-MCS-CMV)に挿入した。このBRAF発現用レンチウイルスベクターを用いて、まずマウスのB前駆細胞の細胞株であるBa/F3にBRAFを野生型・変異型ともに導入し、表現型の確認を行った。 上記と並行して、LCHにおけるBRAF以外のドライバー変異の検索目的に、BRAF-V600Eが陰性であったLCH組織検体3例に対して網羅的ゲノム解析を行い、BRAF-V600E以外のドライバー候補となる遺伝子を同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子導入のためのレンチウイルスベクターは野生型・変異型ともすでに完成しているため、次年度はこのBa/F3細胞で行ったものと同様の手法で臍帯血由来の造血幹細胞にBRAF遺伝子の導入を行い、まずはin vitroでの形質転換能を確認する。そして、当初の計画通り、免疫不全マウスへの移植によるin vivoモデルの樹立を目指す。また、新規に同定したBRAF以外のドライバー遺伝子候補の機能解析も併せて行う予定である。
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Research Products
(2 results)