2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J02150
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮前 良平 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
Keywords | 被災写真返却活動 / 復興ボランティア / 災害の記憶 / 災害伝承 / 災害ミュージアム / 死者との共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、東日本大震災後に被災各地で行われている被災写真返却活動での実践や災害ミュージアムにおける実践を通して、想起が復興にいかに寄与しているのかを明らかにすることを目的としている。 平成28年度は、主に以下の三点を行った。①岩手県野田村での被災写真返却活動の継続とそれにともなう恊働的実践および参与観察の継続②国内外を問わず、災害の歴史を伝えるミュージアムへの訪問③熊本地震被災地への支援活動を基にした恊働的実践。①については、復興高台団地に移住する被災者の語りから東日本大震災についての記憶が風化していくことを自然のこととして受け入れていく土壌が出来上がりつつあることを描写し、日本質的心理学会で発表した。②については、「人と防災未来センター」(神戸市)、「水俣病資料館」「水俣病歴史考証館」(どちらも水俣市)、「知覧特攻平和会館」(知覧市)、「9.11 National Museum」(New York)、「921地震教育園」(台中)、「津波博物館」(バンダ・アチェ)を訪問し、その成果の一部を論文として投稿している。 ③については、現段階において恊働的実践から離れるものではなく、豊かな研究実践につながっているわけではないが、平成29年度以降も引き続き、恊働的実践を継続し、実践研究の萌芽を探索していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画において、岩手県野田村でのフィールドワークと災害や戦災の記憶を伝えるミュージアムへの訪問を、当該年度の研究活動の軸に据えた。これらについては、概ね順調に進んでいると評価できる。なぜならば、野田村へは、ほぼ一ヶ月に一回の頻度でフィールドワークを継続することができ、震災から6年が経過しようとしていた被災地での声を継続的に聴くことができた。この成果は、学会でも発表することができ、貴重なフィードバックを得た。また災害ミュージアムについても「人と防災未来センター」(神戸市)、「水俣病資料館」「水俣病歴史考証館」(どちらも水俣市)、「知覧特攻平和会館」(知覧市)、「9.11 National Museum」(New York)、「921地震教育園」(台中)、「津波博物館」(バンダ・アチェ)を訪問し、多くの知見を得ることができた。しかしながら、2016年4月14日16日に立て続けに発災した熊本地震の影響で、熊本地震からの復興過程も研究範囲に加えることとなり、当初の計画と多少のズレが生じていることは否めない。 多少のズレはあるものの、熊本地震の際の恊働的実践は、当初の計画を大きく脅かすのではなく、むしろ、さらに豊かな研究実践の萌芽となりうる可能性を秘めていると考えられる。当初の計画では勘案することのできなかった災害直後における想起と復興の関係について、より深く被災者の声をもとに実践研究を進めることが可能となった。現在においても、熊本の被災者とも東北の被災者とも良好な関係を築けており、平成29年度以降の研究活動においても、ポジティブな影響が期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、本研究は、①岩手県野田村でのフィールドワークの継続②熊本県益城町での被災者インタビュー③東北の被災各地での写真家へのインタビュー④災害ミュージアムへの訪問を通じて、研究を推進させていく。 具体的な内容については、これまで被災写真返却活動の周囲における被災者とボランティアの様相を議題にしてきた。しかしながら、今後の研究においては、被災写真が持つ特性について、写真を撮影することの意義についてを詳細に検討していく予定である。その際に、上記①~④が有機的連関をもって、研究の基盤となるだろう。
|