2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16J02150
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮前 良平 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 被災写真返却活動 / 復興ボランティア / 災害の記憶 / 災害伝承 / 死者との共生 / 当事者・非当事者 / イギリス災害研究 / 語りえないこと |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2011年に発災した東日本大震災後に被災各地で行われるようになった被災写真返却活動での実践や災害ミュージアムにおける実践を通して、想起が復興に以下に寄与しているかを明らかにすることを目的としている。 平成29年度は、主に以下の三点を行った。①岩手県野田村での被災写真返却活動の継続とそれに伴う恊働的実践および参与観察の継続②野田村以外の被災地で写真またはアーカイブを用いた活動を行っている方々へのインタビュー調査③熊本地震の被災者へのインタビュー調査。以下、それぞれについて簡潔に報告する。 ①については、災害復興において、既存の研究で復興の姿として評価されてきた「何かを饒舌に語ることができるようになること」ではなく、被災者が語らない何かを保持し続けることの意義を明らかにし、『実験社会心理学研究』に原著論文として投稿した。②については、宮城県南三陸町で、被災前から地域を取り続けている写真家の方へインタビューを実施し、写真にかける思いを伺った。また、宮城県仙台市では、震災後から市民アーカイブに取り組む方々にインタビューを実施し、今後のアーカイブの可能性を伺った。これらのインタビュー結果は、平成30年度の調査と併せて学会で報告し、論文化する予定である。③については、熊本地震で被災された方に、ご自身が被災前に撮った思い出の写真を持ってきていただき、それらについて思い出話を伺った。これについても、今後の調査結果と併せて論文化を進めていく予定である。 また、申請者は現在、イギリスNorthumbria大学で在外研究を行っており、災害研究の日英比較や、当事者概念についてなどをUKADR(英国防災連盟)の会議などで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、申請者の主なフィールドである岩手県野田村への訪問のみならず、熊本、南三陸、仙台で重要な調査を行うことができた。また、後期からは、イギリスにおいて災害研究をリードしているNorthumbria大学で客員研究員として、Andrew Collins教授に師事し、当初の計画にはなかった災害研究の日英比較とそれに伴い、日本における当事者概念のイギリスへの輸入を行うことができた。 野田村での写真返却活動の実践からは、「被災写真による『語りえないこと』の恢復」と名付けた論文を『実験社会心理学研究』に投稿し、高い評価を得、掲載にいたった。イギリスでの在外研究においては、現在、災害研究の日英比較についての研究ノートを準備しており、平成30年度中には投稿できる予定である。 これらのことから、本年度の研究進捗は、昨年度以来継続してきた調査結果をまとめ、論文として報告し、さらに、英語圏での議論を通して、当初の研究と比べても飛躍的に進行していると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後本研究は、①岩手県野田村でのフィールドワークのさらなる継続②熊本県益城町での被災された方を対象としたインタビューの継続③被災地で活躍する地元写真家の方へのインタビュー④災害を含む悲劇の歴史を保存したミュージアムへの訪問を通した災厄の記憶の歴史文化比較⑤災害研究の日英比較とTojisha概念の深化の五点を軸として研究を推進させていく。
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