2016 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシア・リアウ州における自立小農のアブラヤシ生産とその流通システムの解明
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16J02180
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小泉 佑介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | インドネシア / リアウ州 / アブラヤシ / 人口センサス個票データ |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者の研究テーマは,インドネシア・スマトラ島中部のリアウ州において拡大する小農アブラヤシ栽培と,その収穫物の流通システムの解明である.報告者の主たる研究手法は,農村に長期間滞在して村民への体系的な聞き取り調査である.加えて,調査対象農村と周辺農村との相対的な位置づけを理解するために,人口センサスや政府の各種統計データの分析を中心としている. 平成28年4月~9月には,農業省農園局リアウ支部および中央統計庁リアウ支部での聞き取り調査を踏まえて,リアウ州中部に位置するA村を調査地として設定した.その上で,同村に2か月間滞在し,村民に対するインタビュー調査を実施した.A村でのインタビュー調査に際しては,現地のカウンターパートであるリアウ大学に加え,A村の経済状況や住民の暮らしぶりに精通している農業指導員1名の協力を得て,2か月間で177名へのインタビューを実施した.その調査結果は,平成28年8月に中国・北京で開催された国際地理学会にて報告済みである. 平成28年10月~平成29年3月には,上記の調査結果の分析を進めつつ,リアウ州中部の農村と比較するため,リアウ州北部に位置するB村を2つ目の調査地として設定した.B村では,A村でのインタビュー調査と同様の調査票を用い,村役場の職員に協力を依頼することで,62名の村民へのインタビューを実施した. また,平成28年度を通じて,リアウ州住民の出生地や民族背景と産業別就業構造の関係をマクロな視点から捉えるため,中央統計庁が公開している人口センサス個票データの分析をおこなった.この分析結果は,論文としてまとめ,現在投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度における報告者の研究は,概ね順調に進んだといえる.インドネシアの中央省庁や地方自治体での調査許可に関わる手続きも,滞りなく進めることができ,平成28年度4月からスマトラ島リアウ州での現地調査を開始することができた.特に,中央統計庁および地理空間情報局では各種統計データやデジタル地図データを入手し,それらを用いてマクロなレベルからリアウ州の特徴を理解するための分析が可能となったことは,大きな収穫であった.また,2つの調査村では村役場や農業局の職員の方々が報告者の調査を快く受け入れて頂き,村の案内からインタビュー対象者の選定まで,様々な面において協力を得ることができた.これにより,一年間で2つの村において合計239名の村人にインタビュー調査を実施することができた.また,州・県・村の行政職員に対しても,調査村における農業生産の現況とそれに対する政府側の支援,あるいは住民への社会福祉サービスなどの政府プログラムなどが,実態としてどのように進められているのかを聞き取ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,平成28年度に調査を実施した2つの村での補足調査をおこないつつ,これまで収集してきたインタビュー調査データの分析結果を論文にまとめて,『地理学評論』に投稿する予定である. 具体的には,調査データをエクセルに入力し,各世帯の基本情報,アブラヤシ栽培面積,雇用労働の賃金,個人事業の所得などの特徴が明確になる個票を作成する.その上で,アブラヤシ栽培面積にもとづいて全世帯を「大規模農家」「中規模農家」「小規模農家」「労働者」というグループに分け,各グループの特徴を分析する.この分析結果をもとに,論文を執筆して日本地理学会の『地理学評論』に投稿する予定である.同時に,平成28年度までの研究をまとめ,博士論文の執筆にとりかかる. 今年度は,調査データの分析を中心とした研究に従事するため,現地での調査に比べると研究計画が立てやすい年度であると言える.2017年11月にインドネシアでの調査許可の期限が切れるが,それまでに博論執筆に必要な捕捉調査を完了する予定であるため,研究計画に大きな変更は生じないと見込んでいる.
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Research Products
(2 results)