2016 Fiscal Year Annual Research Report
果実的野菜中成分の変動機構の解明に基づく新規加工技術の開発
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16J02189
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
金房 純代 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門 食品加工流通研究領域, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 水中短波帯交流加熱処理 / パルス処理 / 搾汁 / 破砕 / 殺菌 / 低温熱風乾燥 / 孔辺細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度前半は国内の受入れ研究機関においてイチゴの加工を行い、後半はスウェーデンルンド大学の在外研究においてバジルの加工を行った。 イチゴの加工において、超高速回転式破砕により粘度を低減した均質な分散安定性を向上させたペーストを作製した。低速破砕では、発泡および酵母や乳酸菌の増殖が認められ、発泡は微生物増殖による二酸化炭素の産生が原因であると考えられた。さらに、ペーストの保存性向上を目的とした殺菌のために、温度制御された水中でプラスチックフィルム包装したペーストに27MHzの短波帯交流を用いた水中短波帯交流加熱処理(RF)を行った。湯浴による従来加熱に比べて、RFは高い温度まで昇温する必要があるが、加熱時間を10分の1以下へ短縮可能なことが分かった。また、従来加熱と比較しても色やビタミンCおよびアントシアニン量の変化は認められなかった。本研究により、超高速回転式破砕という物理的加工技術と、水中短波帯交流加熱処理という電気的加熱技術を組み合わせることで、保存性が高く従来よりも高品質なイチゴペーストの加工を可能とした。 バジルの加工において、バジル葉を電気的パルス処理することで、孔辺細胞に電気穿孔が起き、気孔が開口した状態のままとなる処理条件および、細胞死レベルに至る処理条件を示した。気孔開口レベルのパルス処理により、パルス未処理試料と比較して乾燥時間を約2分の1に短縮した。これは、孔辺細胞へのパルス処理により気孔を開口状態にすることで水分の蒸発を促進させ、乾燥時間が短縮したものと考えられる。また、細胞死レベルのパルス処理により乾燥時間をさらに6分の1に短縮させた。これは孔辺細胞だけでなく周囲の細胞が電気穿孔を受け細胞内成分が流出したためと考えられる。本研究により、パルス電圧の異なる電気的処理と低温乾燥という熱的加工処理を組み合わせることにより低温短時間の乾燥処理を可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、国内受入れ研究機関において、超高速回転式破砕という物理的加工技術と、水中短波帯交流加熱処理という電気的加工技術を組み合わせることで、保存性の高く従来よりも加熱殺菌時間の短いイチゴペーストの加工を可能とした。その結果をまとめて国内および国外において学会発表を行った。 さらに、8月末よりスウェーデンルンド大学において、バジル葉を丸ごと電気的パルス処理することで、孔辺細胞に電気穿孔が起き気孔が開口した状態のままとなる処理条件を見出し、低温乾燥という熱的加工処理と組み合わせることで、低温短時間の乾燥処理を可能とした。現在、GC/MSデータの動的な多変量解析による乾燥処理したバジル中の香気成分の変動量の評価を進めており、研究計画通り、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はバジルから得られた水分活性量データの評価および、GC/MSデータの動的な多変量解析による香気成分の変動量の評価に基づいて、野菜中の香気成分、機能性成分、水分の変動機構を解明し、今後その成果を国際学会で報告し、取りまとめて論文投稿する予定である。 さらに次年度以降、果実的野菜としてスイカを用い、フードプロセッサーなどによる破砕後、乳酸菌を添加し、果実的野菜果汁の乳酸菌発酵中にパルス処理をすることで乳酸菌の代謝の改善を目指す。具体的には不快臭の抑制、乳酸産生の促進および酢酸産生の抑制、機能性の発現するような処理方法の導出を目指す。 帰国後は、ルンド大学で得られた成果を基に乳酸発酵、電気的加工を含めた新しい加工方法を導入する。果実的野菜としてスイカを用い、加熱および電気的加工による酵素失活および殺菌による保存性向上について検討し、粘度、粒度分布、ゼータ電位の測定、加速度試験による果汁の品質変化を評価指標として、高品質な果汁の加工方法の開発を目指す。
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Remarks |
研究成果のテレビ・ラジオ放映 1.SVT1、Elstotar ger godare basilika、2017年2月12日 2.SVT1、Basilika:Elchock ger mer smak、2017年2月12日 3.TV4、Koppla in startkablarna、2017年2月14日 4.Deutschlandradio、電気的刺激によるスパイスの香り向上、2017年3月3日収録済
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