2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J02214
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 土満 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 指数定理 / 無限次元多様体 / 非可換幾何学 / ループ群の表現論 / 幾何学的量子化 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画段階では,ループ群そのものを無限次元多様体とし,その上の指数定理の構築を目指していた.しかしそれよりも適切と思われる設定とそれに関する先行研究を見つけたため,次のような問題にあたることにした:ループ群LTが無限次元多様体に,「ほとんど自由に」作用しているときに解析的指数理論を構成し,それを正当化せよ.ただし,Tは円周とする. 本年度はその問題を解いた.より詳しく言うと,その群作用と空間から決まる連続関数環とループ群LTによるcrossed productと見なせるC*環A,スピノルのL^2切断のなす空間と見なせるHilbert空間H,Dirac作用素と見なせる作用素Dを構成し,そこからSpectral tripleと,解析的指数を構成して見せた.これは私の知る限り前例のない仕事であり,無限次元空間の指数理論に向けた,大きな成果と言える.この成果は論文[Doman Takata: An Analytic LT-equivariant Index and Noncommutative Geometry](以下[T])にまとめ,arXivにアップしてある. [T]は,Kasparovによる,局所コンパクト群が有限次元多様体にproperかつcocompactに作用しているときの指数理論を,無限次元に拡張することを目指したものであり,この結果の「次の一般化」としては自然な選択であるように思われる.しかし[T]の構成はKasparovの結果に完全に平行しているわけではなく,発展途上という段階である. また,[T]の結果は,crossed productという商空間の非可換幾何版の,無限次元版の構成,WZWモデルというPeter-Weylの定理のループ群版の一部の正当化,Hamiltonian LT空間の幾何学的量子化,LTのBorel-Weil理論などを含み,非可換幾何を用いた無限次元空間の解析に貢献できたように思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画段階では群が非可換な場合も含めL^2空間を構成する予定でいたが,実際に扱えたのはトーラスの場合のみである.一方,ループ群よりも大きな空間の関数環の構成,解析的指数の構成等は2年目にやる予定であったことをも超えている.また,いささか抽象的だった研究計画に比べ,より具体的な問題設定を得ることができ,さらに,より非可換幾何的な方向に進むべきという方向性も定めることができた.そのあたりを総合的に判断して,研究は順調に進んでいると思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に沿うならば群が非可換な場合を研究するべきであるが,上に挙げた論文の構成には,群の可換性が非常に重要であった.そのため,同じ結果を出そうとしても同じアイデアで,というわけにはいかない.そこで,群が可換な場合を,もっと詳しく研究する方針を取りたい. より詳しくは,既に得られた解析的指数をKK理論的に書き直すことで,すでに構成した環Aのサイクリックコホモロジーなどで表示し,``cohomology formula''を導くことを目指す. ただし,今回の結果,(H,D)をAのSpectral triple,したがってKホモロジー群の元として定義するというのは,定理の理想的な形ではない.Kasparovによって指摘されたように,crossed productのKホモロジー群の元は,transversally elliptic operatorのホモトピー類のなす群と見なせるからである.今回の結果をKK理論的に書き直すには,どこかを修正する必要があり,それをどうするかというのが本年度の課題である.
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