2016 Fiscal Year Annual Research Report
分裂酵母fbp1におけるゲノム三次元構造を利用した遺伝子発現精密制御機構の解明
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16J02252
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
浅田 隆大 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | ゲノム高次構造 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の核内の空間的ゲノム構造解析技術の発展により、真核生物の核内に収められているゲノムDNAは組織的に構築された三次元高次構造をとっていることが明らかとなってきた。そのような三次元的ゲノム高次構造が生命活動においてどのような役割を果たすのか、その意義の解明に最近注目が集まってきている。我々は、分裂酵母のグルコース飢餓応答性の遺伝子であるfbp1遺伝子の転写制御の際に、近傍の転写因子結合配列が空間的に近づいたような特殊な局所的ゲノム高次構造が形成されることを突き止めている。本研究では、このfbp1遺伝子の転写制御系をモデルとして、局所的なゲノム高次構造が転写の精密制御の際に果たす役割について研究を行った。 高次構造形成不良が生じる変異株を見つけ、その株の解析によりこの構造の意義を解析した。その結果、転写因子Rst2のfbp1転写活性化に必須な結合部位への結合がこの高次構造によって制御されていることを突き止めた。Rst2は自身の必須結合部位からはなれたゲノム領域に一端捕獲され、高次構造形成を介して必須結合部位へ移行する。また、Tupファミリーコリプレッサーが、Rst2が不用意に必須結合部位に結合することを抑制していること、高次構造を介した結合によりこの抑制に拮抗することを見いだし、適切なタイミングでRst2が必須配列に結合できるようなメカニズムが構築されていることが明らかになった。さらに、人工的に高次構造を介さずにRst2が必須配列に結合できるようになる株を作製すると異常な転写活性化がみられるため、高次構造を介した転写因子の標的配列結合制御により適切なストレス応答が可能になっていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
局所的な高次構造が持つ生物学的意義を明らかにすることができた。本研究を行ったことにより、なぜ転写因子がゲノムに無数に存在する結合サイトの中からその結合サイトを選択し、適切なタイミングで結合できるのかという疑問に対する答えとして、ゲノム高次構造を介して制御されるという新概念を提案することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、この高次構造形成の分子メカニズムを解明し、一般性を明らかにする。このfbp1領域では、非コードRNAが転写されている。また、トポイソメラーゼの過剰発現でfbp1転写の活性化が減弱することから、非コードRNA転写により生じるDNAの超らせん構造によって局所的ゲノム高次構造が促進されるというモデルを想定している。その点について解析していく予定である。
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Research Products
(3 results)