2016 Fiscal Year Annual Research Report
小地域における平均と分散の同時縮小推定法とその応用
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16J02424
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
玉江 大将 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 小地域推定 / 線形混合モデル / ギブズサンプリング / 枝分かれ誤差回帰モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域毎にサンプルサイズが十分に確保されておらず、それによって標本平均が不安定な推定値をとる小地域問題における予測の改善を新たなモデルの枠組みで提案している。小地域推定においては線形混合モデルを用いた経験ベイズ推定量による予測量の攻勢が主流である。地域レベルの小地域推定における予測量を構成する際に、従来の平均に関してのみ縮小をかけるFay-Herrriot modelが有力な手法として挙げられる。しかし、小地域では標本平均のみならず標本分散も不安定で、従来の縮小推定量が標本分散に依存する形で与えられるため、分散に関しても縮小をかける同時縮小モデルがMaiti et al(2014)により提案された。このモデルのもとでMLEによるパラメータ推定を行う際には、興味のあるパラメータである地域平均を積分消去する際に、積分が解析的に解けないことから数値積分により対処している。そこで本研究においてはMLEではなくpriorにnon informative priorを採用しobjectiveなBayesian inferenceを実行する同時縮小モデルを提案した。このモデルはMaiti et al(2014)で提案された同時縮小モデルが目指したように標本分散に関する階層構造を加えたモデルとなっている。手法の妥当性の検討のために、そのposteriorがimproperであること証明するとともに数値実験、および実データ解析による有用性を鑑みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究課題である同時縮小推定法に関する成果が"Bayesian estimators for small area models shrinking both means and variances."のタイトルのもと、Scandinavian Journal of Statistics(査読付き国際雑誌)にて採択された。また、ベイズ法ではなく近似された尤度関数のもとでの推論に関する論文も改訂中であり、まとまり次第査読付き国際雑誌に投稿予定である。今後は上記の同時縮小推定モデル、および今後の研究の推進方策で挙げる欠損データに関する小地域推定モデルについて9月に行われる日本統計学会等で発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在新たに “Nested Error Regression Model with Non Ignorable Missing Values”というテーマのもと新たな小地域推定におけるモデリング及びベイズ推論に関する研究を行っている。小地域問題の設定において地域ごとにはサンプルサイズが十分に得られておらず、そのため地域数が無限大の際の漸近論を考えているが、これを別の観点からみると地域毎に多大なる欠損データを抱えた問題とみることもできる。この欠損がランダムに生じているケースにおいては従来の枝分かれ誤差回帰モデルが小地域における予測量を構成するうえで機能するが、欠損メカニズムがデータの値それ自体に従っている場合は無視できない欠損値(Non ignorable missing values)となり、従来の方法では欠損構造によるバイアスなどが生じるため何らかの対処が必要となる。このような欠損ケースをMissing not at random(以下MNAR)と呼ぶ。Fae et al(2011)においては共変量におけるMNARに対処すべく欠損に関する観測データをもとにモデルを構築し、変分ベイズ法によって高速に推論を行っている。このモデルを枝分かれ誤差回帰モデルを拡張する形で、かつ欠損が共変量ではなく被説明変数において生じている場合を考える。このようなモデルにおけるベイズ推論上、事後分布がproperであることを証明したうえでGibbs samplingによるMCMCを実行する。現在、数値実験上、通常の枝分かれ誤差下記モデルをで推論を行った場合より提案モデルのもとで予測量を構成した場合、MSEで図った予測誤差が改善されることが確認されており、今後理論的性質について導出しまとめた後に査読付き国際雑誌に投稿する予定である。
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Research Products
(1 results)