2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J02442
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉田 翔平 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
Keywords | 企業間提携 / 技術供与 / 競争政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
「なぜ、企業は競争企業に無償で技術供与することがあるのか」という問題を分析した。競争企業間の無償の技術供与は近年、競争政策において関心の高まっている「競争企業間における協力的行動」のひとつとして挙げられる企業の戦略的行動である。カルテルにつながる可能性のあるこの種の行動は競争政策的に注意すべきであるが、そのためにはまず、企業の動機について理解しなければならない。本研究では、無償の技術供与がなぜ起こるのかについて供給側、需要側それぞれの要因から明らかにした。 一つ目の論文では、垂直的取引関係のある産業における、水平的に差別化された2財を販売する複占企業の数量競争モデルを構築した。重要な点は、“専属サプライヤー”と呼ばれる、特定の企業とのみ取引するサプライヤーの存在であり、日本の企業間取引関係でしばしば指摘されている点である。主要な結論として、企業が中間財を“専属サプライヤー”から調達する場合、効率企業はライバルに対して相対的に費用の高い財に関する技術を無償で供与することがあるという結果が得られた。 二つ目の論文は消費者の異質性という需要面の特徴に着目したモデルを分析した。現実経済では、異なる消費者群から成る市場は多く見られる。例えば、WindowsとAppleはOS市場で競争しているが、Appleには「忠実な顧客」と呼ばれるApple製品に囲い込まれている消費者群が存在する。このように、“両方の企業からよりよい製品を選択する消費者群”と“囲い込まれた消費者群”という異質な消費者群から成る市場はますます広がっている。具体的には、ホテリング複占モデルを用いて、製品の好みと品質に対する評価の異なる消費者群から成る市場における価格競争を分析し、両グループの消費者が製品の質に対して異なる評価をする場合、ある企業がライバルに対して品質向上に資する無償の技術供与をすることがあることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
競争企業間の無償の技術供与に関する分析を行い,研究成果を2本の論文にまとめたこと,さらにその内1本は査読付国際学術雑誌から改訂要求を受けていることから,おおむね順調に進展していると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
1年目に完成したの論文については改訂要求への対応、投稿を順次行い、掲載を目指す。 また,1年目に発生した新たな研究のアイデアを国内外の学会やセミナーで報告し,他の研究者からのコメントを論文に反映させることで,論文の質の向上を目指す.
|
Research Products
(6 results)