2017 Fiscal Year Annual Research Report
ソーレー効果を利用した光学的センシング手法による物質輸送現象の解明に関する研究
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16J02498
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松浦 弘明 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 熱物性 / 輸送現象 / レーザー計測技術 / マイクロスケール熱工学 / ソーレー強制レイリー散乱法 / 物質拡散係数 / ソーレー係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の成果は以下のようにまとめられる。 1. ソーレー強制レイリー散乱法による3成分系のソーレー効果センシング (1) 3成分ベンチマーク系の測定不確かさ評価: 3成分系における物質輸送現象の解明のためこれまでに開発してきた、2波長の観察用レーザーを用いたソーレー強制レイリー散乱法の測定システムを用いて3成分系ソーレー係数・熱拡散係数のベンチマーク値が存在する系(n-ドデカン+イソブチルベンゼン+1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)のソーレー係数および熱拡散係数の測定を行った。更なる測定不確かさ低減のために信号の解析方法の検討を行い、また「計測における不確かさの表現ガイド(GUM)」に基づいた不確かさ評価によって測定法としての信頼性を明らかにした。(2) 3成分ポリマー溶液のソーレー係数・熱拡散係数の測定: 酪酸酢酸セルロースを2種類の有機溶媒(スチレン, 2-ブタノン)に溶かした3成分系の測定を行い、複数の混合比・温度におけるソーレー係数・熱拡散係数の変化を明らかにした。 2. 赤外ソーレー強制レイリー散乱法の開発 直接メタノール型燃料電池で重要となる高分子電解質膜内メタノール水溶液の物質拡散係数の測定を行うことを目的に、物質輸送現象を赤外レーザーによって励起する赤外ソーレー強制レイリー散乱法の開発を行った。(1) 試料セルの設計: 赤外レーザーと観察用レーザーの両波長の散乱が小さい単結晶ダイヤモンド窓材を新たに導入し、これを用いて電解質膜試料を封入するための試料セルを新たに設計した。(2) 妥当性の確認: 測定システムの妥当性を評価するため、298.2 Kにおいてメタノール水溶液の物質拡散係数の測定を行った。この結果、他手法による測定結果と不確かさの範囲内で一致し、測定システムの妥当性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、研究実施計画に記載したすべての項目を達成した。これまで3成分系の物質輸送センシングのために開発してきたソーレー強制レイリー散乱法の測定システムについて標準不確かさ評価も含めて論文にまとめ, また世界に先駆けてポリマーを含む3成分系の測定結果を示した。加えて物質輸送現象を赤外レーザーによって励起する赤外ソーレー強制レイリー散乱法の開発を行い、その測定システムについて論文投稿に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
ソーレー強制レイリー散乱法による3成分ポリマー溶液の測定については、組織的な実験と考察により3成分系におけるソーレー効果についての知見をさらに深める。赤外ソーレー強制レイリー散乱法による電解質膜内拡散係数の測定では、一般的な高分子電解質膜であるNafion 117や構造が異なる電解質膜を用いて膜内水溶液の拡散現象センシングを試みる。得られた成果について、国内外でのシンポジウムにて発表を行うとともに論文発表を推進する。
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Research Products
(6 results)