2016 Fiscal Year Annual Research Report
「生まれ」の時期の違いを利用する遺伝子導入法を用いた線条体区画構造の神経活動解析
Project/Area Number |
16J02501
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥宮 太郎 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 線条体 / パッチ / マトリックス / カルシウムイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
ほ乳類線条体には,パッチ区画とマトリックス区画の二種類の解剖学的区画が存在するが,その機能的役割は未解明である.本研究の目的は,二種の区画構造を区別して,行動中のマウスからカルシウムイメージングを行うことにより,学習における線条体区画構造の役割を明らかにすることである.本年度は,研究実施計画に基づき,基盤となる実験系を構築した. 1) 区画構造の発生時期の違いを利用して,線条体区画選択的な遺伝子導入を可能にするマウス実験系を構築した.まず子宮内電気穿孔法を用いて,発生時期の異なる線条体区画への選択的遺伝子導入を行った.しかし,成体まで育つマウス個体は少なく,目的に必要な個体数を得ることが困難であったことから,既存の遺伝子改変マウスを掛け合わせることで,発生時期の異なる線条体区画選択的にレポーター遺伝子を発現させる手法に取り組んだ.条件検討の結果,線条体パッチ区画選択的に蛍光タンパク質を発現するマウスを作成し成体マウスを得ることに成功した.また,線条体マトリックス区画選択的に蛍光タンパク質を発現するマウスについても,遺伝子改変マウスを用いて実現可能なことがわかった. 2) 自由行動下のマウス線条体において神経活動を計測するため,顕微内視鏡を用いた脳深部イメージング法を習得した.カルシウム感受性タンパク質をウイルスベクターによりマウス線条体に発現させ,線条体に顕微内視鏡を留置し観察した.その結果,視野内に観察される個々の細胞を単離してカルシウム感受性タンパク質の蛍光輝度を計測できた.さらに,計測が自由行動下のマウスで実施可能なことを確認した. 次年度は,これらの研究成果を組み合わせ,各線条体区画を区別しつつ行動中のマウスから神経活動を記録し解析する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
線条体区画構造を標識できる成体マウス実験系を構築でき,神経活動を記録するための脳深部イメージング法を習得できたためである.当初計画していた子宮内電気穿孔法による成体マウス実験系の構築は実験に必要な個体数を得ることが困難であったが,既存の遺伝子改変マウスを掛け合わせることで,発生時期の異なる線条体区画選択的に遺伝子導入できる見通しが立った.また,顕微内視鏡を用いた脳深部イメージング法を計画通り習得し,カルシウム感受性タンパク質を用いた蛍光イメージングに成功した.したがって,順調に研究が進展したといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,実際に線条体区画を区別してカルシウム感受性蛍光タンパク質の蛍光輝度を計測解析し,生きたマウスで線条体区画構造の役割を明らかにしたい.当初計画では頭部固定マウスにおいてオペラント学習課題を実施する予定であったが,自由行動下で神経活動が解析できる脳深部イメージング法の利点を生かし,より制限のない自由行動下マウスにおいて学習課題を行うよう行動実験計画を見直す.
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