2016 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫脳IP3イメージングを核とする絶食による侵害熱反応低下の神経機構の研究
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16J02571
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
大橋 ひろ乃 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / IP3イメージング / 痛覚 / 絶食 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はショウジョウバエ(ハエ)において,絶食が引き起こす侵害熱反応低下の制御メ機構の解明である。これまでの研究から,その制御機構のシグナルとして神経ペプチドの1つであるleucokinin (lk)/ Lk receptor (Lkr) シグナルが関与することが示唆された。また,ハエのLkは摂食により分泌されると考えられている。しかし,実際に絶食によりlk/Lkrシグナルが低下していることを証明した論文はまだない。本研究において絶食によりlk/Lkr シグナルが低下すること,このシグナルの低下により侵害熱反応低下が誘発されることを検証することは必要不可欠である。このため,採用第1年度目はこの測定系の確立を目指し,研究を進めた。 研究計画ではこのシグナルの測定を1:定量PCR(遺伝子発現),2:抗体染色(タンパク質),3:IP3イメージング(プローブを介した分子レベルの解析)で行うことを計画していた。 1においては,サンプル回収の条件検討を行い,来年度は実際に測定を行うことが可能となった。2においては申請者がすでに作製したmycタグ付きLk強制発現系統に加え,新たにLk抗体ならびにLkr抗体を作製した。,以前の報告と同様の細胞での染色が確認された。今後,申請者が作製したlkノックアウト系統とLkrノックアウト系統を用いて抗体の特異性について確認する。3は本研究の特徴であるIP3イメージングである。Lkrはその下流でIP3が生成されるGq蛋白共役型のGPCRであると考えられている。ハエで利用できるIP3のプローブはないため,哺乳類のIP3プローブであるLIBRAv強制発現系統を作製した。Gq蛋白共役型GPCRのを活性化すると,LIBRAvの蛍光が変化することを確認した。これにより,LIBRAvがハエにおいても機能する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調と評したのは,大目的の1つが達成に近付いたからである。 本研究の大きな目的の1つは,世界初のハエでのIP3イメージングの確立であった。ハエでは現在カルシムイオン,膜電位などのプロ―ブが利用できるがIP3のプローブは未だない。そこで今回哺乳類のFRETタイプのIP3プローブであるLIBRAv強制発現系統を作製し,IP3イメージングの確立を試みた。摘出脳イメージング解析において,IP3を下流で生成するGPCRを刺激した際に,LIBRAvの蛍光の変化が見られた。この結果は,LIBRAvがIP3によって構造が変化し蛍光に変化が生じたことが考えられる。今後,IP3特異性を証明する追試は必要だが,ハエでのIP3イメージングの確立に十分近づいたと言える。このため,おおむね順調と評した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では初年度に①脳内のLk/Lkrシグナルの測定,次年度では②ジャンプのコマンドニューロンであるGFニューロンの神経活動の測定,③遺伝学を用いた神経活動制御による侵害熱反応測定であった。 本研究の目的は絶食によりlk/Lkr シグナルが低下すること,このシグナルの低下により侵害熱反応低下が誘発されることを検証することである。これらの証明を行うには,①と③を遂行することが必須である。このため①および③の項目を優先的に進めていくことにする。 まず,第1年度に確立したlk/Lkrシグナルの測定方法を用いて,絶食に対するこのシグナルへの影響を調べる。またIP3プローブ(LIBRAv)は,ショウジョウバエにおいてはIP3特異的にの反応しているかの確認する実験を行っていない。このため,それに関しての追加実験も行う。しかしlk/Lkrシグナルが低下を証明できたとしても,絶食による侵害熱反応の低下の影響がlk/Lkrシグナルによって引き起こされるかを証明したことにはならない。そのため光または熱遺伝学的ツールを用いてlkおよびLkrが発現している神経を制御することにより,行動レベルでの検証を行う。
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