2017 Fiscal Year Annual Research Report
「環化-分子間アルキリデン基移動」反応を鍵とする新規多置換複素環合成法の開発
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16J02647
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
儀間 真也 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 金触媒 / 転位反応 / へテロ環 / エステル基 / イソオキサゾリン合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
π酸性遷移金属触媒を用いたアルキンの活性化を鍵とする骨格転位反応は、分子骨格を構成するσ結合の開裂を経由し、複雑な分子骨格を一段階で構築出来ることから、非常に魅力的な反応である。当研究室では近年、O-プロパルギルオキシムに対し、銅触媒を用いることで形式的な2,3転位が進行してN-アレニルニトロン中間体を形成し、オキシム上の置換基によって様々なヘテロ環化合物が得られる事を報告している。その研究途上で我々はO-プロパルギルホルムアルドキシムに対し、一価の金触媒を用いることで、C=N二重結合の開裂を経由し、4位にメチレン基をもつイソオキサゾリン誘導体が得られることを見出した。本反応は温和な条件下、入手容易な基質から対応する様々な置換基をもつイソオキサゾリンを合成できるものの、本反応においてオキシム上の置換基について検討を行ったところ、本反応の転位基は無置換のメチレン基に限られていた。そこで、本反応の適用可能な転位基の拡大を目的として、オキシム上の置換基についてより詳細に検討を行った。 オキシム部位がメチレン基の基質では反応が円滑に進行するのに対し、アルキル基をもつ基質では反応系が複雑になり、アリール基をもつ基質では原料を回収する結果となり、いずれも生成物は得られなかった。オキシム部位に置換基が入ることで、環化中間体のイミニウム部分の求電子性が低下しているのではないかと考え、今度はオキシム部位にエステルを導入した基質を用いて検討を行ったところ、中程度の収率で生成物が得られ、転位基の適用範囲を拡大することができた。反応条件を最適化した後、アルキン末端やプロパルギル位に様々なアルキル基やアリール基を導入して反応を行ったところ、いずれも中程度から良好な収率で目的生成物が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究により、4位にアルキリデン基を持つイソオキサゾリン誘導体の合成法の開発に成功した。4位にアルキリデン基をもつイソオキサゾリンのこれまでに報告されている合成例としては、ニトリルオキシドとアレニルアミンとの3+2付加環化反応による合成と、ニトロンと不飽和カルボニル化合物とのルイス酸による縮合反応が報告されている。しかし、これらの反応ではイソオキサゾリン上の置換基にアミノ基やアルキル基などの制限があった。これらと比較して、本反応は温和な条件下、入手容易な基質から対応する様々な置換基をもつイソオキサゾリンを原子効率良く合成できる。さらに光学活性な基質を調整し、本反応を適用することで光学活性なイソオキサゾリン誘導体を合成することも可能である。これらの特徴から、本反応論は共役イミン構造をもつへテロ環の合成法として有用であると考えられる。今後、本反応によって多くの新たなへテロ環を合成し、従来では合成が困難であった化合物のライブラリーとして提供でき、創薬化学へ貢献できると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、共役イミン構造をもつ多置換ヘテロ環化合物のπ酸性遷移金属触媒による一般的な合成法の開発を目指す。具体的には、基質のオキシム部分をイミンやヒドラゾン、チオキシムへと変換した基質を設計し、本反応を用いることで対応する様々なヘテロ環が合成できると考えられる。また、6員環を意図したO-ホモプロパルギルオキシム基質を設計し、検討を行う。本手法により、窒素原子のβ位にアルキリデン基をもつ様々な多置換ヘテロ環化合物の合成が可能となる。さらに、芳香環で連結した基質で反応が進行すれば、インドールやジヒドロキノリンが合成できると考えられる。 また、ビニル金属中間体からの分子間アルキリデン基移動反応の具体的な機構に関しては依然として明確ではない。反応機構の解明とその機構に立脚したさらなる反応系の開拓を目指す。具体的には、本反応において金錯体の配位子・対イオンの最適化と、触媒を基質に対して等量用いて反応を行うことで、反応中間体と考えられる錯体の単離及び構造決定ができると考えられる。得られた錯体の構造を基に反応機構に関するDFT計算を行い、ビニル金属中間体がC-C結合を形成する機構について明らかにする。さらに、単離した錯体に対し基質や他の添加剤を加えることで、反応の進行を確認する。また、DFT計算を行って中間体からアルキリデン基が転位した生成物を与える反応機構について明らかにする。そして、明らかになった反応機構から、新たな反応系の開発を行う。
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Research Products
(2 results)