2017 Fiscal Year Annual Research Report
表層型ガスハイドレートの形成・分解に関わる海底環境の変動解析
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16J02710
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
尾張 聡子 千葉大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ガスハイドレート / 沈み込み帯 / ヨウ素 / 間隙水 / 地球化学 / OsmoSampler |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はガスハイドレートを効率よく発達させるガスチムニーに着目し,長い時間スケールでガスチムニーがどのような働きを持つのか明らかにすることを目的とし,ガスハイドレート,ガスチムニーが共に発達する日本海東縁と,ガスハイドレートは胚胎するが,ガスチムニーが発達しないニュージーランドヒクランギ沈み込み帯を対象とした. 日本海では直径数百mのガスチムニーという構造が多数存在し,このガスチムニーは深部で生成したメタンを大量に含んだ流体を海底表層までに効率よく移動させる役割を担う.このため日本海には表層型ガスハイドレートがガスチムニー内や直上に広く分布する.本研究ではこのガスチムニーがどれほど古いメタンを運び表層型ガスハイドレートを形成しているのかを明らかにするため,ガスチムニー上から得られたコアリングの間隙水試料からヨウ素を抽出し同位体比を測定した.間隙水に溶存するヨウ素には安定同位体(127I)の他,半減期1570 万年の放射性同位体(129I)が存在し,同位体比(129I/127I)の測定から流体に溶存するメタンの起源や年代を推定できる.ヨウ素同位体比分析結果から,ガスチムニー内では海底直下まで古い起源(低いヨウ素同位体比)のメタンが上昇してきていることが明らかとなった.ニュージーランド沖は顕著なガスチムニーの発達は見られないが,海域全体で高い有機物含有量,高メタン環境の海域である.この海域で行われた国際深海科学掘削計画 第372次航海にInorganic Geochemistとして2017年11月~2018年1月まで乗船し,間隙水ヨウ素試料を採取した.掘削調査では船上での間隙水採取と分析を担当し,この海域ではガスチムニーのような浅部までメタンを運ぶ経路がないかわりに,メタンや水が深部でも面的な広がりを持ってメタンハイドレートとして固定されている環境であることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガスチムニー・ガスハイドレートが共に胚胎する日本海に対し,ガスハイドレートが胚胎するが,ガスチムニーの胚胎しないニュージーランドヒクランギ沈み込み帯,ガスチムニーもガスハイドレートも胚胎しないスマトラ沈み込み帯の間隙水試料を採取し,主要溶存成分分析を行った.昨年度採取したスマトラ沖の試料分析は特にヨウ素濃度が低く,日本海やニュージーランド沖と比較してもメタンポテンシャルも低いことを明らかにした. またスマトラ沖の航海において間隙水分析結果から海底下1300m付近で鉱物からの脱水が起きていることを明らかにし,この脱水がスマトラ沖の地震活動と深くかかわっていることを論文にまとめ,共著で発表した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は日本海,スマトラ沖,ニュージーランド沖のヨウ素分析を継続する.また日本海のガスハイドレート形成・分解に関わる変動をオスモサンプラーを用いた短期的時間軸とヨウ素同位体を用いた長期的時間軸を組み合わせて議論を進める.また現在までに得られた三海域の試料データをまとめ,地質背景と共にガスハイドレートの発達や形成分解過程を明らかにする.
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