2016 Fiscal Year Annual Research Report
NIRSによる怒り感情制御プロセスの生理的基盤の解明
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16J02752
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
武部 匡也 関西大学, 心理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 怒り / 怒り反すう / 怒り対処方法 / 認知的再評価 / 認知行動療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
怒り感情喚起中の脳血流量を測定し,質問紙評定による怒りの対処方法を合わせて測定することによって,怒りの制御プロセスの生理的基盤を解明することが目的であった。26名の研究協力者を対象に,被験者内計画の実験を実施した。実験は3つの課題(①怒り喚起課題,②自分の視点から怒りの体験を思い出す課題,③第三者視点から怒りの体験を思い出す課題)から構成されており,各課題中の脳血流量および質問紙による怒りの状態,怒りの対処法が測定された。 その結果,質問紙評定によって自分の視点から怒りの体験を思い出す課題において,最も怒り感情が喚起されており,不適切な怒りの対処方法の得点が高いことが示唆された。また,第三者視点で怒りの体験を思い出す課題では,自分視点と比較して,怒りは弱い程度でしか喚起されず,怒りの適切な対処方法が高い得点を示していた。怒りをうまく制御するためには,過去の怒りの体験を第三者視点から思い出すことが重要であることがこの実験から示唆された。これらの質問紙評定の結果は,先行研究と同様の結果が得られており,実験手続きによる結果の再現性が示された。脳血流量のデータについては,現在解析を実施中である。 この研究は,これまで怒りの適切な対処方法を促すとされていた認知行動療法がどのような作用機序によって有効であったのかを明らかにする一助となる。この研究の結果から,認知行動療法は怒りの体験を第三者視点から思い出すことを援助することで,怒りをうまく対処できるようにしていたと一部明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
解析ソフトの入手が遅れてしまったため,脳血流量のデータについての解析が現在遅れてしまっているものの,データの収集は完了し,論文執筆も脳血流量のデータの報告部分以外は書き上げている。また,脳血流量の測定を実施した実験のデータ収集が早めに完了したため,追加の実験を実施している。追加の実験は,怒り低減の手段として本研究が採用しているマインドフルネスの効果を検証するものであった。介入研究の実施前に、実験的なマインドフルネスの操作によって怒りへの有効性を検証し,介入研究を頑健に支持する実験であった。その実験の結果,怒りに対するマインドフルネスの有効性が確認された。当初の予定になかった追加の実験を行い,本研究の介入を支持する結果が得られたため,当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は大学生を対象にしたマインドフルネスに基づいた介入を実施し,その有効性を検証する。先行研究によって頑健に有効性が確認されているMindfulness-Based Cognitive Therapyを参考にし,これまで得られた研究結果も基にして介入プログラムを実施する。無作為化対照試験デザインを採用し,介入プログラムの効果を検討する予定である。
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