2017 Fiscal Year Annual Research Report
エポキシ樹脂の硬化過程におけるメゾスコピックな空間不均一性と力学特性の相関
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16J02835
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
青木 美佳 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 接着剤 / 空間不均一性 / 粒子追跡法 / ダブルカンチレバービーム試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
エポキシ反応系中では、重合・架橋反応の進行に伴う濃度揺らぎの凍結により、網目よりも大きなスケールの空間不均一性が誘起されると考えられる。このような空間不均一性を明らかにし、不均一性と接着特性との関係が理解できれば、樹脂系接着剤の新たな設計指針が提案できる。本研究では、エポキシ樹脂の硬化過程における不均一性を理解し、不均一性が接着特性に与える影響を明らかにすることを目的としている。 初年度には、粒子追跡法に基づき、エポキシ硬化過程において空間的な不均一性が発現することを明らかにした。平成29年度は、異なる硬化過程を経由する樹脂の接着特性を比較することによって、硬化過程で生じる不均一性が樹脂の接着特性に与える影響を検討した。具体的な項目を以下に示す。 ①エポキシ樹脂は、エポキシ基およびアミノ基を有する化合物の反応によって得られる。プレ硬化条件が283 K、72時間および296 K、24時間の硬化過程を選択した。それぞれ低温条件および高温条件とし、いずれもプレ硬化後に373 Kで1時間加熱した。反応過程を赤外分光測定に基づき評価した結果、低温条件におけるプレ硬化過程は、高温条件のそれと比較して反応速度が遅く、官能基の消費率は低かったが、373 Kで1時間加熱することによって、両条件における官能基の消費率が同じであることが確認された。 ②上記の条件で硬化した樹脂の網目構造を、溶媒膨潤法を用いたX線小角散乱測定に基づき評価した。その結果、硬化過程における散乱プロファイルは硬化条件に依存しなかった。これは、異なる硬化過程を経由した樹脂の網目構造はほぼ等しいことを意味している。 ③接着特性を、ダブルカンチレバービーム試験に基づき評価した。低温条件で硬化した樹脂の接着力は高温条件のそれと比較して大きくなった。これは、硬化過程の違い、すなわち空間不均一性が接着特性に影響を与えることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、異なる硬化過程を経由するエポキシ樹脂を用いることによって、エポキシ樹脂の硬化過程で生じる空間不均一性が樹脂の接着特性に影響を与えることを明らかにした。研究成果の一部は国際学会を含め複数の学会にて発表済みであり、現在、学術論文として投稿準備中である。以上の理由により、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、エポキシ樹脂の硬化過程における空間不均一性を可視化することを試みる予定である。具体的には、硬化反応の進行に伴って蛍光特性が変化する色素を樹脂中に分散させ、顕微鏡にて観察することによって、架橋構造の疎密を可視化する。さらに、膜厚方向における不均一性を解析し、接着特性との相関を検討する。得られた結果に基づいて、不均一構造ひいては接着特性の制御を検討し、新たな材料設計指針の提案を目指す。
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