2017 Fiscal Year Annual Research Report
プラットフォーム分子parafibrominが司る腸管上皮のシグナル統合制御機構
Project/Area Number |
16J02902
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
先山 奈津紀 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
Keywords | 胃がん / ピロリ菌 / CagA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではピロリ菌タンパク質CagAにより細胞老化が促進される点に着目し、CagAの長期発現が分泌形質獲得に寄与するという作業仮説のもと、CagAによる胃上皮細胞の分泌形質獲得機構、ならびに細胞周囲の環境変化が発がんに及ぼす影響の解明を目的としている。昨年度は、レンチウイルス感染によりcagA遺伝子を導入したヒト胃上皮細胞由来の細胞を6日間培養し、その培養上清を用いて、CagAを発現していない胃上皮細胞を培養し、細胞増殖能への影響を調べた。その結果、CagA発現細胞由来の培養上清は細胞増殖を有意に促進したことから、今年度は、この現象の責任分子の同定を試みた。 まず、DNAマイクロアレイによりCagA発現細胞におけるmRNAの発現解析を行い、CagA発現細胞において増加が見られた遺伝子の中から、分泌タンパク質として知られる複数の遺伝子を責任分子の候補とした。続いて、qRT-PCRにより、これら候補分子のバリデーションを行い、発現増加に再現性のある分子を絞り込んだ。さらに、胃上皮細胞の培養液中に候補分子の組換えタンパク質を添加し、細胞増殖能への影響を調べた。その結果、候補分子の添加により細胞増殖が促進された。以上の結果から、ピロリ菌CagAが分泌タンパク質の発現誘導を介して、細胞増殖を促進することが示唆された。ゆえに今後は、候補分子による細胞増殖促進機構の解明を目指して、研究を遂行する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、CagA発現細胞由来の培養上清が細胞増殖を促進する現象の責任分子を同定することを研究の目的とし、網羅的遺伝子発現解析を用いて細胞増殖を促進する候補分子を明らかにした。以上より、研究実施計画通りに研究が進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、候補分子による細胞増殖促進機構を解明することを目的とし、研究を進める。具体的には、ヒト胃上皮細胞由来の細胞において、候補分子により活性化する下流のシグナルを同定し、細胞増殖を制御する分子基盤の解明を試みる。さらに、CagAによる胃上皮細胞の分泌形質獲得が発がんに及ぼす影響を明らかにすることを目指し、研究を遂行する。
|