2017 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属触媒による不活性結合切断を経る選択的官能基化反応の開発と応用
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16J02904
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
近藤 晃 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ルテニウム触媒 / 炭素ーヘテロ元素結合切断 / モノ官能基化 / トリアリールホスフィン錯体 / トリアルキルホスフィン錯体 / 芳香族ケトン / アントラキノン誘導体 / アントラセン誘導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ルテニウム触媒を用いた不活性結合切断を経る選択的なアリール化反応を本年度の研究課題として取り組んだ。 前年度開発した電子供与性の高いアルキルホスフィン配位子を有するRuHCl(CO)(PiPr_3)_2錯体とフッ化セシウムおよびスチレンを組み合わせた触媒系を用いた2’,6’-ジメトキシアセトフェノンの炭素-酸素結合切断を経る選択的モノアリール化反応において、反応機構解明に関する実験を行った。その結果、反応系中ではRuHCl(CO)(PiPr_3)_2錯体とフッ化セシウムの反応によりアニオン種の交換が確認されたため、RuHF(CO)(PiPr_3)_2錯体の生成を経て反応活性種の低原子価ルテニウム種が生成するとともに反応が開始していると現在のところ考えている。また、適切な反応溶媒を用いることで、オルト位に複数の反応点を有する芳香族ケトンの化学選択的な炭素-水素結合切断を経るモノアリール化が進行することも見出した。 続いて、RuH2(CO)(PPh3)3を触媒として用いたアントラキノン誘導体の炭素-酸素および炭素-フッ素結合切断を経るアリール化と還元的芳香族化反応を逐次的に行うことで、フルオロ基を多数有するアントラセン誘導体の効率的合成と物性評価を行った。合成したテトラアリールアントラセン誘導体について、フッ素の置換位置によって、液体と固体における発光波長の差に違いが生じることが明らかとなった。加えて、単結晶X線構造解析からフッ素の位置によって結晶構造が変化したことから固体状態における分子間のパッキングの仕方の違いが影響していると示唆される結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究実施計画に関して、昨年度に開発した触媒系の特徴を精査した。アルキルホスフィン配位子を有するルテニウム触媒存在下、各種芳香族ケトンとアリールボロン酸エステルの反応を検討した結果、添加剤が触媒活性種の生成に関与することを見出した。さらに本触媒系は適切な溶媒を用いることで炭素-水素結合切断を経るモノアリール化反応への適用も可能であることを見出した。加えて、ルテニウム触媒を用いた炭素-酸素および炭素-フッ素結合切断を経るアリール化反応を用いて、フルオロ基を多数有する多環芳香族炭化水素の効率的合成と分光学的性質の解析を行った。これら成果は学術論文としてSynlett誌に掲載されるとともに、国内外の学会発表も精力的に行い、高い評価を得ていることからも期待通りに研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ルテニウム触媒を用いた化学選択的な結合切断を経るアリール化反応において、基質適用範囲の拡大と反応メカニズムに関する知見を引き続き調査する。 さらに、これまでに開発した合成スキームを利用して様々な置換基を有する軸不斉化合物や新規多環芳香族炭化水素の合成に挑戦し、本合成戦略の応用性を示す。また、多様な触媒活性種の効率的な生成法の開発も同時に行い、既存の手法では実現できなかった反応性の発現を目指す。
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Research Products
(4 results)