2016 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞由来エクソソームの中枢との相互作用メカニズムの解明
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16J02928
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒田 広樹 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | エクソソーム / 血液脳関門 / がん細胞 / 架橋剤 / 網羅的プロテオミクス / 受容体 / SWATH法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん細胞由来のエクソソームの血液脳関門透過機構を定量的に明らかにすることを目的としている。本年度は、血液脳関門透過の最初の段階である、血中エクソソームが脳毛細血管内皮細胞へ内在化するのに関与する受容体候補分子を同定した。 脳転移性の高いがん細胞由来のエクソソームが脳毛細血管内皮細胞に多く内在化するとの報告から、脳転移巣由来のヒトがん細胞株をエクソソームのドナーとした。従来のエクソソーム受容体の同定法は、エビデンスに基づいた仮説から受容体分子を推定し、阻害実験で検証するものがほとんどであった。しかし、エクソソームと細胞の相互作用は複数の分子間相互作用によって担われているため、仮説ベースの方法では有力な候補分子を見逃す可能性があった。そこで本研究では、エクソソーム上の受容体を網羅的に同定するために、光親和性反応基を有する架橋剤を用いて、エクソソームの内在化に関与する相互作用分子画分を回収し、網羅的プロテオミクスで同定する手法を確立した。 確立した回収法でヒト脳毛細血管内皮細胞株hCMEC/D3細胞上のエクソソーム相互作用分子画分を調製した。これを高感度・高再現性をもつ網羅的プロテオミクス;SWATH法で解析した結果、約400タンパク質に由来するペプチドを疑陽性率5%未満で同定した。これらのタンパク質の中で、細胞膜に発現し、タンパク質同士の接着機能を有する分子を絞り込んだ結果、複数のエクソソーム受容体候補分子を見出した。別角度からエクソソームの受容体分子を絞り込むために、同定された約400タンパク質のパスウェイ解析を行った。その結果、エクソソーム受容体候補分子として同定した接着分子が関与する3つのパスウェイに関わる分子がエクソソームの相互作用分子画分に多く含まれることが示され、この接着分子がエクソソームの内在化に関与する分子であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、脳毛細血管内皮細胞への内在化活性の違うエクソソームを比較して、脳毛細血管内皮細胞におけるエクソソーム受容体を同定する計画であったが、複数のがん細胞株由来のエクソソームの内在化活性に差が見られなかった。そこで、架橋剤を用いた受容体探索法を新たに樹立することで、受容体候補分子の同定に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
同定したエクソソーム受容体候補分子が、エクソソームの内在化に寄与することをin vitroおよびin vivoの系で明らかにする予定である。さらに内在化したエクソソームが脳毛細血管内皮細胞から脳側へと放出される機構に必要な分子をin vitroの系で同定することを目指し研究を進める予定である。
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Research Products
(2 results)