2016 Fiscal Year Annual Research Report
腸管の恒常性維持におけるタンパク質架橋酵素の生理的意義
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16J02938
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
槇 光輝 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | トランスグルタミナーゼ / ショウジョウバエ / NF-κB / 転写因子 / 自然免疫 / ポリアミン / 免疫寛容 / タンパク質架橋 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質の架橋反応は、生理的に重要な様々な反応を引き起こす。その架橋反応を担うのがトランスグルタミナーゼ(TG)である。TGは、タンパク質のGln残基とLys残基の側鎖間に共有結合形成させる架橋酵素である。これまでの研究により、ハエのTGが免疫寛容に関与していることが明らかとなっている。その免疫寛容は、TGがNF-κB様の転写因子であるRelishを架橋することで引き起こされることが判明しているが詳細な分子機構は不明である。本研究では、TGによるRelishの架橋様式を解析することで、免疫寛容の詳細な分子機構を解明することを目的とした。 大腸菌を用いて組換え体のRelishを調製し、組換え体RelishがTG基質となるか確かめた。TG合成基質が組換え体Relishに取り込まれたことから、組換え体RelishはTGの基質となることが確認できた。さらに、TGがRelishのどの部位を架橋しているか調べるために質量分析を用いた解析を行った。その結果、6カ所のGln残基がTGの標的となることが判明した。6カ所のGln残基は、RelishのDNA結合に重要な領域であった。TGの架橋反応がRelishのDNA結合に関与しているのではないかと推定し、RelishのDNA結合力を調べる実験を行った。TG合成基質を取り込ませたRelishにおいて、RelishのDNA結合力が低下した。TGによる架橋反応がRelishのDNA結合力を低下させ、転写因子の機能を抑えていると考えられる。生体内でTGの基質として知られ、ポリアミンの1つであるスペルミンをハエに摂食させたところ、免疫応答の抑制が認められた。また、その免疫応答の抑制はTGノックダウンハエでは起こらなかったことから、生体内において、TGによりポリアミンがRelishに架橋されることで転写因子の機能が阻害されていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に予定していた、組換え体タンパク質を用いた生化学的手法による、Relishの架橋部位の解析を終えることができた。試験管内の解析だけでなく、ポリアミンを摂食させたハエにおいて免疫抑制が起こることが確認できた。生体内における解析も行うことができ、当初の実験計画以上の進展がみられた。また、研究成果も論文としてまとめ、国際誌に受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Relish以外のTG基質の解析を行う予定である。ハエの物理的な生体防御膜である囲食膜を構成するタンパク質の1つがTGの基質となることが分かった。TGによる架橋反応が、生体内においてどのような生理的意義を有しているのか、組換え体を用いた解析や遺伝子ノックダウンハエを用いて解析する予定である。
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Research Products
(8 results)