2016 Fiscal Year Annual Research Report
多様な爆発現象を用いた初期宇宙における星形成と巨大ブラックホールの起源の解明
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16J02951
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
仲内 大翼 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | stellar wind |
Outline of Annual Research Achievements |
まず申請者は高赤方偏移で発見された超巨大ブラックホールの起源として有力な超大質量星の形成が宇宙初期において可能かどうかを調べた. 超大質量星が形成するためには星の寿命の間質量獲得が持続される必要がある. しかしながら, 100太陽質量を超えると星はエディントン限界光度近くで輝くので星の表面から恒星風が発生して質量放出を行う可能性がある.恒星風が発生すると質量放出のため星の質量獲得を阻害する可能性が懸念されるのにもかかわらず, これまで恒星風の影響は考えられてこなかった. そこで申請者らは静水圧平衡な星外層と連続的につながる星風解を構築し, 降着進化する大質量星の表面から恒星風が発生する可能性を調べた. 計算の結果得られた星風解はすべて一度は超音速領域まで加速されるものの, 結局は減速されて再び星表面へと落下してしまうような性質のものであった. 従って星は恒星風のために質量獲得を阻害されることなく超大質量にまで進化できることを申請者らは示した. 次に超大質量星の終末期に関する研究に着手した. そこでは, 回転している超大質量星が一般相対論的不安定や核燃焼の枯渇により重力崩壊を開始すると, その中心部にBHと降着円盤の系が形成され, そこから相対論的ジェットが駆動されると仮定した. そして相対論的ジェットに注入された膨大なエネルギーにより起こされる超新星爆発の観測的特徴や観測可能性を評価した. その結果, 発生する超新星は通常の超新星よりも100-1000倍程度明るい上に, 10年程度継続する現象になると評価された. このような超新星はEUCLID, WFIRST, WISH, JWSTといった近赤外線帯域におけるサーベイ計画でも十分に検出できる可能性があることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まずはじめに高赤方偏移で発見された超巨大ブラックホールの起源として有力な, 超大質量星の形成が宇宙初期において可能かどうかを調べた.具体的には超大質量星の表面から恒星風が発生して星の質量獲得を妨げる可能性がないかどうかを検討した. その結果, 定常的な恒星風が発生しないので超大質となるまで質量獲得を続けられることがわかった. また超大質量星が終末期に起こす超新星爆発の観測的特徴や将来衛星計画による検出可能性を検討した. その結果, 近赤外線帯域におけるサーベイ計画で十分に検出の可能性があることを示した. さらには当初の研究計画の範疇を越えて, 上記の研究で培った計算手法を近傍宇宙で観測されているWolf-Rayet星に適用し, 未解明であるWolf-Rayet星からの質量放出機構について検討し始めた. 今年度は国際研究集会に二度参加して研究成果のポスター発表を行った. また国内の研究集会では口頭発表を四度, ポスター発表を一度行った. これらを鑑みるに当初の計画以上の研究の進展があったと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は始原的な組成を持つ星からの星風を考えた. 重元素を含む星からの星風の場合, 不透明度が大きくなるため, 星風が発生しやすくなると考えられる. そこで, 星風解の重元素量依存性を調べる. また今年度は定常的な星風解を考えた. 現実の系においては定常の仮定は必ずしも妥当ではないので, 多次元の数値流体シミュレーションを用いて星風の発生条件や性質を調べる. さらには, 磁場を持つ恒星も観測されているので, 磁場により駆動される星風についても検討する.
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