2016 Fiscal Year Annual Research Report
Study on cognitive science based science lessons that promote self-efficacy
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16J03041
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
原田 勇希 北海道大学, 大学院理学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 理科 / 自己効力 / 個人差 / 視覚的イメージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,言語的な認知的処理や視空間的イメージに関わる個人差と理科の学習達成との関連を示す先行研究の知見を受け,小学校高学年および高校入学直後の1年生を対象に,これらの個人差変数と理科の自己効力との関連を検討することを目的とした。 その結果,小学校5・6年生の時点では,言語性ワーキングメモリ(以下WM)の個人差と理科の自己効力との関連はあったが,視空間性WMとの関連は弱かった。この結果を2016年7月に開催された国際心理学会議(ICP2016)にて発表した。 また高校1年生を対象に,言語性・視空間性WMと中学校時代の理科学習に対する統制感との関連を検討したところ,小学生と同様に言語性WMはあらゆる理科の分野の統制感を説明し,視空間性WMは特に物理分野の統制感に対して強い説明力を示した。この結果を2016年9月に開催された東アジア科学教育学会(EASE2016)にて発表し,結果について同分野の研究者と議論した。 さらにこれらの研究結果を受け,入学直後の高校生に調査を実施した結果,中学校理科における物理分野の自己効力に空間的なイメージ処理の個人差が強く関連する可能性が示唆された。さらにその個人差変数が影響力を持つ場面は物理の問題解答で要求される作図過程に同定された。これらの結果を2016年8月に開催された理科教育学会全国大会と2016年9月に開催された日本教育工学会全国大会にて発表した。 したがって,次年度は中学生の理科に対する自己効力と視覚的イメージ処理の個人差による影響力をより詳細に検討する必要性があるのではないかとの示唆を得ることができた。また,理科の自己効力が低減しやすい子どもの特徴として空間的イメージ処理に対する苦手さが関連することが示唆され,自己効力を醸成する効果的な指導法を考案する際に着目すべきポイントが導出されたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に行った研究の結果,当初予想していた小学校理科と視空間性ワーキングメモリ容量との関連が見出だされなかった。しかし,学校種を変更して調査を継続した結果,中学校理科で自己効力が低減しやすい子どもの特徴が明らかとなり,さらに理科の学習分野や学習場面が同定された。認知的処理特性の個人差によって理科の自己効力が減退しやすい時期と学習分野が明確化されたことから,次年度でさらに詳細な検討をするための基礎的知見が導出されたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は中学校理科に対する自己効力の変動と,それに関連する個人差要因として視覚的イメージ処理特性に着目し,自己効力が変動しやすい場面や学習内容などより詳細に検討することとする。そのため中学校1年生を対象に縦断的研究を行い,理科の自己効力の変動過程をモニタリングしながら,その要因の分析を行うとともに,効果的な指導方策の導出を試みる。
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Research Products
(5 results)